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【冒頭抜粋】
「それでは、わが図書委員に寄せられた苦情の数々をここに読み上げたいと思う」
こほんとひとつ咳払いをすると事前に内容のまとめられた紙を広げ、委員会一同を見渡した。いったい何事だ、と見返す面々。
普段、見慣れた彼女らの表情には疑問符が舞っている。
再び落とした紙面の上に飛び交う苦情の嵐、それらの内容を目でなぞり、思わずため息が漏れた。
「『貸出の手続きをしてくれる女の子の口調が変。二年男子』
『本の並べ方の基準がよくわからない。一年女子』
『新しく入る本のジャンルが辞書に偏っているのは何とかしてほしい。三年男子』
『もう延滞しませんから許してください。二年男子』
『哲学のコーナーで見つけた本は素敵でした。おかげで新しいジャンルに目覚めました。一年女子』
とまあ、このように数々の苦情が押し寄せてきているわけだが……」
俺は熱き理想に燃える某大国の大統領のごとく、机を両手に叩きつけた。
「おまえら! 図書委員の仕事を一体何だと思ってんだ――!」
俺の魂の叫びは図書室を中心とし、学園全土に響き渡っていたとか、いないとか。まさか、こんなことを叫ぶことになっているであろうとは、入学当初の俺は夢にも思うまい。