水晶人間
▼アメリカの短編作家エドワード・ページ・ミッチェル(1852年~1927年)により1881年1月にニュー・ヨーク・サン誌で発表された透明人間の登場する小説”The Crystal Man”の拙訳です。ちなみにウェルズの『透明人間』の発表は1897年。
▼本作を一読してまず気付かされるのは、「体内の色素を破壊することで透明人間を作り出す」という技術的アイデアが、ウェルズの透明人間のそれと極めて酷似していることです。あるいはウェルズもまた本作から、「技術的手段による透明人間」の着想を得たのかもしれません。
▼一方で、ウェルズの透明人間とミッチェルの透明人間との違いに注目すれば、透明化を社会道徳からの解放と前向きに捉えるグリッフィン博士に比べて、社会からの追放者となったことを嘆く本作の主人公フラックの純真ぶりが挙げられるでしょう。道徳や倫理にさして幻想を抱いていなかった社会主義者ウェルズに対して、ミッチェルはあくまで人間性の側に立った作家でした。
▼原文は
http://www.forgottenfutures.com/game/ff9/tachypmp.htm にあったものを使用しました。