「・・・あー、それはだね・・・。」
つい先日の事になる。世間では早けりゃ仕事納め、学生が今此処にどれだけ居るかは知らんが、冬休みって奴で人が多くなる傍らで、こっちは毎度のことながらの御守やら破魔矢に弓、護神刀といった物の補充が始まる。もはや、毎度のことではあるのだが、この作業が面倒で仕方がない。それに場所を変えてもしっかりと覚えておいでだ・・・。しっかりと納札殿にはまあ使い切った札やらは確りと返納されてる。しっかし、神聖な仕来りを行い清浄な炎で天に還すのが礼儀作法とはいえ・・・此処の邪な人間の生んだ炎に御利益なぞとも思えなくもないのだ。まあ、それは良い。
で、その補充に来る業者というか、こういうのも作って貰える場所ってのはある。其処に発注を頼んでるが、今年はちょいと訳があって端数が出るように頼んでいる。勿論というか、此処に来るのは割と何時もの人。だから、何か変な頼み方をするとスグに分かる。
「宮司さーん。サンタの代わりにプレゼントですよー。」
「・・・ウチは基督じゃねえぞ。」
「とはいえ、チキンも甘い物も好きでしょ?」
「それはそうだが・・・。」
「で、ですね・・・えっと一応、最初の注文がですね。」
まあ、味の好みがバレたのは別の理由ではあるのだが、何にしてもだ・・・。それで妙な事を突かれたのだ。
「最初はそうだったな。」
「あってますね。で、その後に修正する分は良いんですけど、例年だと思いの外注文があるみたいですが今年は何故か端数なのが気になってですね。」
「んー・・・そうだなあ。」
「いや、何かあったのかなーって。」
この時に端数に出したのは「破魔弓」「破魔矢」「無病息災」の3つ。実は、ひと月前に注文は済ませてたのだが、その4日後にまさか流行病に倒れる事になるとはこの時は思いもしなかった。日頃の態度が悪かったのだろうとは思うのだが、結果として一週間近くの殆どを寝床で過ごす事になった。
彼にも上記の前振りをしつつも、それを話したら納得してもらったようだった。
「・・・というわけなんだ。」
「で、肖ろうと。」
「そんなところだ。」
「神事で如何にかするとばかり思ってたけど違うんですねぇ。」
「そうも行かない位身動き取れなきゃそうなる。それに他所の神様仏様に頼るわけにもいかないだろう。」
「そうですねえ。あ、今日配達多いんだった!」
「だったら、神職揶揄ってねえでさっさと行け。」
「じゃ、失礼しまーす!」
運び屋は足早に退散していった。しかしまあ、これで今年の僅かな日々ってのを少しだけ味わう事も出来そうだ・・・。