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2022年12月20日(火)〜 2023年3月5日(日)まで開催された、小説コンテスト「第5回百合文芸小説コンテスト」の受賞作品がついに決定しました。
女性同士の恋愛や友愛をテーマにした小説を募集した本コンテストでは、1,600作以上の応募作品が集まりました。たくさんのご応募ありがとうございました。
厳正な審査の結果、受賞となりましたのは以下の作品です。
■大賞(両部門合わせて1名)
賞品:賞金20万円、コミック百合姫に扉イラスト・挿絵イラスト付きで掲載
『追悼十周年特別記事 『盗作者・榊葉瑞枝の人生』』/
マルチョウさん
〈選評〉
「追悼記事」という形式や「盗作者」というトピックでしっかり目を引きつつ、最後まで物語として楽しめるように練られていた点に唸らされました。徐々にピースがはまっていく感覚や、印象に残る締め方など、工夫と綿密さを感じる一作。(コミック百合姫編集部)
■コミック百合姫賞(両部門合わせて1名)
賞品:賞金10万円、コミック百合姫にてコミカライズ検討
『近日点はまだ遠く』/
遠井音さん
〈選評〉
終末までの期限の中、人間らしい感情を得ようとする人間・ティグリスと、感情豊かなロボット・マナセという対比的なキャラクターが魅力的な作品。ラストシーンも、王道なシチュエーションを二人らしさを感じる形でしっかり書き上げていて印象的でした。(コミック百合姫編集部)
■新潮文庫nex賞(両部門合わせて1名)
賞品:賞金10万円、新潮文庫nex編集室の担当が付き、書籍化検討
『オンタリオに着くまでは』/
ピクルズジンジャーさん
〈選評〉
奴隷の黒人少女と、彼女が仕えるお嬢様という設定や二人の関係性が新鮮でした。「自由黒人」になるための逃亡に白人お嬢様を伴っていくというお話の展開が『荊の城』を彷彿とさせ好みでした。この二人のその後が気になります。(新潮文庫nex編集室)
■書泉百合部賞(短編部門より1名)
賞品:賞金3万円、書泉百合部限定グッズ
『Mother』/
青い発光体さん
〈選評〉
学生時代の恋に恋する甘酸っぱい気持ちから、大人になっていく過程で社会の固定概念に抗いながら深くなっていく関係性が疾走感のある文章で綴られていてとても没入感がありました。話の後の主人公達が待ち受けるのは明るい未来であって欲しいと願いたくなる幸せな気持ちにさせてもらえる作品です。(書泉百合部)
■EARLY WING賞(短編部門より1名)
賞品:賞金3万円、EARLY WING所属声優2名 (本郷里実・鷹村彩花) によるボイスドラマ化
『靄の中』/
高代さん
〈選評〉
表現や言葉のひとつひとつが丁寧かつリアルで没入出来ました。私は大抵、本1冊を読むほどの気力や時間がないような仕事帰りに癒しを求めてpixiv小説を読んでいます。なのでどんなコンディションでも無理なく読める手軽さ、そして何より普段小説を読まない人でも読みやすいのでは無いかという所も加味して選考させて頂きました。この作品は表現や言葉選びは少し文学的なのに疾走感があり読みやすく、世代や好みを問わず楽しめると感じました。何より最初の一文で惹き込まれ、読了感は爽やかなのに後を引く内容でした。個人的にこういう少しノスタルジックなお話が好きというのもあり、是非朗読させて頂きたいなと選ばせて頂きました。(鷹村彩花)
文章から受ける気持ちにこちらも喉の奥がツンとします。
彼女が居なくなってしまった事を確かめるように日々を過ごす「私」。
誰もが大切な相手に対して抱いたことのある感情が、切なくも美しく綴られていました。
「私」の考えがまとめられていくと同時に、読み手の私達の頭の中も整理されていきます。
喪失を認識する度、胸が締め付けられますが読み終わる頃には優しい気持ちになります。
誰かの存在が誰かを生かす、素敵なお話でした。(本郷里実)
■pixiv賞(両部門より複数名)
賞品:図書カード2,000円
『燁煙』/
伊島糸雨さん
〈選評〉
近未来でありながらも退廃的で、人の無気力さややるせなさを感じる雰囲気が印象的な作品でした。特に煙草や映画といったアイテムの使い方が素晴らしいですが、会話が少し説明的になっているところが惜しいと感じました。
『私だけが知っている』/
わかしまさん
〈選評〉
鮮烈な作品で、登場人物のまっすぐな感情から生じるストーリーの没入感が群を抜いていました。特に思わず共感してしまうような10代特有の複雑な悩みが丁寧に描かれており、とても引き込まれました。
『le Rose -薔薇のはがた-』/
伊藤路加さん
〈選評〉
吸血鬼と人間の種族を超えた二人の関係が美しく、読み進めたくなるような物語の構成に光るものがありました。イタリアを舞台に、綿密に描かれた街の風景が登場人物の心情とマッチしていて良かったです。
『山咲のばらを消さないで』/
asapiさん
〈選評〉
自分が辛い時に救ってくれた崇拝対象のような推しのアイドルと、クレーム電話を通じて交流するというアイデアが素晴らしく、とてもワクワクする作品でした。百合としての魅力が伝わるような描写がもう一声あると、さらに良くなると思います。
『水無物語:骨の心』/
Usickさん
〈選評〉
何重にも積み重なった話の仕掛けが面白く、引き込まれました。心理描写が繊細で、主人公の複雑な気持ちがダイレクトに伝わります。百合が強く押し出されるストーリーではないですが、妻と「彼女」が想い合う気持ちの強さを感じられる作品でした。
『#89c3eb』/
そらゆにさん
〈選評〉
友人を好きになってしまった葛藤と、友情と恋心の狭間で悩む気持ちが繊細に表現されているところが良かったです。無難な設定である分、どこか突き抜けるようなひとひねりが欲しいという印象でした。
『mirror mystery』/
はぐ@はっぴーがらぱごすさん
〈選評〉
引退宣言をしたところから話が進んでいく、という印象的な展開から目が離せませんでした。正反対な二人のキャラクターがしっかりと立っていて、どちらかに見劣りがないのも良かったです。
『雨のち晴れ、ときどき虹色Vtuber』/
犬衣縫さん
〈選評〉
リアルとバーチャル、推される側と推す側など、様々な関係性の狭間で揺れ動く人間の感情がありのままに表現されていて面白かったです。展開をもう少し丁寧に描くことで、さらに心に残る作品になるのではと思います。
『想と葬』/
めのはさん
〈選評〉
現実と回想シーンが入れ替わり綴られ、生前の思い出や二人の関係が静かに描かれる様子が素敵でした。悲しさと切なさが混じり合う雰囲気が良い作品ですが、フックとなるものがもうひとつ欲しいと感じました。
『失楽園』/
かなこさん
〈選評〉
外への憧れを強く抱くバクとそれを見守るノウマ。2人の関係が、実は見たままではないのだと分かる展開がとても面白かったです。複雑な設定を魅力的なキャラクターと合わせることで、勢いがあり読みやすい作品に仕上がっていました。
■全受賞者副賞
短編部門:2023年にピクシブより発行予定の「百合文芸小説コンテストセレクション5」へ収録
中・長編部門:pixivノベルへ掲載
受賞者のみなさま、おめでとうございます。
受賞作は今後、コミック百合姫へのイラスト付き掲載や、書籍化・コミカライズ化の検討が予定されております。
また短編部門の受賞作は2023年秋頃発行予定の「百合文芸小説コンテストセレクション5」に収録されます。今回の表紙イラストレーターは、
チェリ子さんに描き下ろし頂きました。
展開を楽しみにお待ちください。
この度はたくさんの作品をご応募いただき、ありがとうございました。今後もpixivに投稿されている百合文芸小説をお楽しみください。
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