あーあ、またやっちゃった。 ベッドから抜け出して石油ファンヒーターのスイッチを入れながら、僕は懲りもせずにそんなことを思う。昨日は1年に1度だけ、とびきり遅くまで起きていても怒られない夜。今年こそはカウントダウンの0にあわせてベッドからジャンプして、「年が変わるしゅんかん地球にいなかったもんね...
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ベッドから抜け出して石油ファンヒーターのスイッチを入れながら、僕は懲りもせずにそんなことを思う。昨日は1年に1度だけ、とびきり遅くまで起きていても怒られない夜。今年こそはカウントダウンの0にあわせてベッドからジャンプして、「年が変わるしゅんかん地球にいなかったもんね」って友達に自慢したかったのに、歌番組の後半で演歌が流れ始めたぐらいから記憶がない。
ついでに今日は1年に1度だけ、「いつまで寝てるの」ってがみがみ言われない日なのに、さっさと布団から抜け出してしまった。なんたって、「もういくつ寝ると」って指折り数えて待っていたお正月。どてらを羽織って階段を駆け下り、神棚にちゃんと手をあわせる。ふだんは怒られたってそんなことしないくせに、ぺこぺこと律儀にお礼をしてから「今年、僕のお願いすることがぜんぶ叶いますように」なんてちゃっかり頼むんだ。大人はいくつもお願いごとしちゃだめだって言うけど、これならひとつだもんね。
それが終わったら家の外に飛び出して、ポストから分厚い束になった年賀状を取ってくる。宛名によって仕分けるのは僕の仕事。おとうさんの山はどんどん高くなって、その次がおかあさん。おじいちゃんとおばあちゃんも負けていない。自分宛のがなかなか出てこないと不安になるけれど、そのぶん見つけたときのうれしさったらない。おまけにそれが年賀状をくれるなんて思ってもみなかった相手、とりわけ気になる女の子から手書きのメッセージつきだったりしたら最高だ。
そんなのもう、さっそく神様がとびきりハッピーな1年を約束してくれたようなものじゃないか。
■■■お知らせ■■■
2015年夏に開催されたCOMITIA113でご好評をいただいた「ノスタルジック・シンドローム」を連載化することになりました。
毎月7日をめどに新作を上げていきたいと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
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