きっと、わかりあえない人だと思っていた。 だって、君と僕とはなにもかもが正反対で、たまたま席が近かった入学式のあの日から、くだらないことでけんかばっかりしていたんだ。 ねえ、君はまだ覚えてる? 最初の運動会で同着1位になって、お互いに自分のほうが速かったって言い張ってたときのこと。テスト前に...
続きを見る きっと、わかりあえない人だと思っていた。
だって、君と僕とはなにもかもが正反対で、たまたま席が近かった入学式のあの日から、くだらないことでけんかばっかりしていたんだ。
ねえ、君はまだ覚えてる?
最初の運動会で同着1位になって、お互いに自分のほうが速かったって言い張ってたときのこと。テスト前に、泊まり込みで勉強したときのこと。僕が上級生にちょっかいを出されて、泣きそうになっていたときのこと。あんなに怒った君の顔、はじめて見たよ。でも、好きな子ができたんだって、真っ赤になってたこともあったっけ。
明日からはもう、ちがうソラ。こっちが快晴でも、そっちはざーざー降りの雨かもしれない。帰り道にコロッケの買い食いだってできないよ。君に伝えたいことは全部伝えたっけ。渡せるものはほかにないかな。そろそろにっかり笑わなきゃ。
ばいばい言うよ。またねって言葉でごまかさずにちゃんと手を振るよ。だって僕たちはこの駅で、いつもそうやってお別れしていたから。また会えるのが当たり前のことなら、わざわざ約束なんかする必要はないんだ。ただ思いっきり、旅立つその背中を叩けばいい。
咲け、咲け、サクラ咲け。君の未来に花開け。
別れた道の先は、きっと描いた夢に繋がっている。僕はこの町で変わらずに生きていくから、君は前だけを向いて走り続ければいい。それでときどき休みたくなったときは、この場所で「おかえり」って迎えてあげるから。
咲け、咲け、サクラ咲け。涙のあとに虹かかれ。
脱ぎ捨てた制服も、傷だらけの机も埃っぽいグラウンドも、全部ぜんぶ僕たちの道しるべだ。
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