FantasticYouth「決壊SALVATION」小説コンテスト 受賞 posts
多くの作品のご応募、誠にありがとうございました！
最優秀賞を受賞した「僕は、俺になった」はFantasticYouth 4月28日リリースの1stEP『BlueGuns』のCDを購入いただいた方に特典として、ボーカリスト・Onyu自らが書下ろした表紙入りで電子書籍としてご覧いただけます。「決壊SALVATION」の楽曲とともに、ぜひお楽しみください。
1stEP『BlueGuns』はこちらからチェック
https://lnk.to/BlueGuns
最優秀賞を受賞した「僕は、俺になった」はFantasticYouth 4月28日リリースの1stEP『BlueGuns』のCDを購入いただいた方に特典として、ボーカリスト・Onyu自らが書下ろした表紙入りで電子書籍としてご覧いただけます。「決壊SALVATION」の楽曲とともに、ぜひお楽しみください。
1stEP『BlueGuns』はこちらからチェック
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最優秀賞
FantasticYouth EP「BlueGuns」特典として電子書籍化/ボーカリスト・Onyuの小説挿絵/FantasticYouth EP「BlueGuns」サイン入りCD
最優秀賞
僕は、俺になった。
土で汚れた頬を拭い、底の薄くなった靴で砂利を踏む。乾ききった口から唾液を集めれば、ザラリとした砂の感触があったので地面へと吐き捨てた。
俺はここに来てから賢い選択をしてきた。
己が生き延びるために。
目の前の少年はかつての『僕』によく似ている。
そして少年もまた、『俺』になるのだろう。
俺はここに来てから賢い選択をしてきた。
己が生き延びるために。
目の前の少年はかつての『僕』によく似ている。
そして少年もまた、『俺』になるのだろう。
【FantasticYouthコメント】 情景描写や設定などがとても丁寧に描かれていて、私の想像していた世界の色、音、温度、匂いが非常に鮮明になっていくのを感じました。「『僕』が『俺』に変わる」という表現がすごく好きです。
特別賞
FantasticYouthのQUOカードPay5千円分/FantasticYouth EP「BlueGuns」サイン入りCD
特別賞
私は、君の救いを壊せない
周りから浮かないように、失敗しないように、ずっと頑張ってきたけれど。
大人になるって、これで良かったんだっけ…。自分では変わらずに生きてきたつもりだった。でも、何かを忘れている気がしてしょうがないの。
ホントは、1番忘れたくないもののはずなのに。
君の救いを壊したのは『僕』だ。だったら、『私』は君の救いを壊さずに済むだろうか。
大人になるって、これで良かったんだっけ…。自分では変わらずに生きてきたつもりだった。でも、何かを忘れている気がしてしょうがないの。
ホントは、1番忘れたくないもののはずなのに。
君の救いを壊したのは『僕』だ。だったら、『私』は君の救いを壊さずに済むだろうか。
【FantasticYouthコメント】 籠の中に自らを閉じ込めた少年の心の内での葛藤がテンポ良く描かれていて、作品冒頭の状況が作られた経緯や少年のこれからについて非常に想像が掻き立てられました。
特別賞
決壊SALVATION 
長らく保健室登校を続けている生徒、佐山は、何故か田邊の授業にだけは顔を出す。
学年主任から言われた『下手な刺激を与えないように』との言葉を大義名分に、田邊は全く佐山を知ろうとしてこなかった。
だけど本当は気づいていた。
佐山は都合良く救いを待っている。
そう、あの頃の田邊と同じように______
学年主任から言われた『下手な刺激を与えないように』との言葉を大義名分に、田邊は全く佐山を知ろうとしてこなかった。
だけど本当は気づいていた。
佐山は都合良く救いを待っている。
そう、あの頃の田邊と同じように______
【FantasticYouthコメント】 舞台が学校という発想が自分にはなく、楽しく読ませていただきました。物語全体を通してなんだか涼やかな感じがして、夏休み前の初夏のお話かな、などと勝手に想像していました。
特別賞
寂寞の牢獄
“僕”は、いつも通り鼠色の世界で目を覚ます。混凝土製の塔が無数に生え並ぶ此処は、“僕”の涙で簡単に穴が開いてしまうほど脆かった。穴だらけの寝床から逃れるため、“僕”は彷徨い、自分と同じ涙を溢す少年と出会う。二人は河を目指し歩き続けたが、鼠色の世界は崩壊を迎える。足元が崩れる中、“僕”は空から伸びる白い糸に一縷の望みを託し、少年を空に向かって放り投げた。
“ぼく”は良く晴れた日に、芝生の上で目を覚ます。賑やかな光景の中、脅迫にも似た人々との関係に心身を蝕まれ、“ぼく”は泥々の混凝土を吐き出した。周囲から逃れるため、“ぼく”は混凝土で塔を作り始める。塔が増えるほど世界は次第に色を失い、周りの音も静まり返る。安堵しながら眠りにつく“ぼく”は、最後に一度だけ、誰かの優しい泣き顔を思い出すのだった。
“ぼく”は良く晴れた日に、芝生の上で目を覚ます。賑やかな光景の中、脅迫にも似た人々との関係に心身を蝕まれ、“ぼく”は泥々の混凝土を吐き出した。周囲から逃れるため、“ぼく”は混凝土で塔を作り始める。塔が増えるほど世界は次第に色を失い、周りの音も静まり返る。安堵しながら眠りにつく“ぼく”は、最後に一度だけ、誰かの優しい泣き顔を思い出すのだった。
【FantasticYouthコメント】 『此処は一体何処なのだろう。』 『僕』と同じく、読んでいる私も、もの寂しいような怖いような悲しいような、不思議な感覚を覚えました。矢向さんの描かれる灰色の世界が、救いのない状況にさらに拍車をかけるようで胸に刺さりました。