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"有機化学と恋して", is tagged with「小説」「オリジナル」and others.

 死んだ魚のような目をしながらも大学院生の私は今日も夜遅くまで実験をしていた。憧...

西園菜音

有機化学と恋して

西園菜音

1/21/2019 03:17
 死んだ魚のような目をしながらも大学院生の私は今日も夜遅くまで実験をしていた。憧れる指導教官、牧原先生の期待に応えるために。私の所属する天然有機化学研究室は生薬の成分の人工合成を研究テーマとしている。私はそのテーマに特に強い関心はない。この研究室を選んだのは牧原先生のことが好きだったからだ。

——高校2年の夏、私はオープンキャンパスに参加して、理学部化学科の学生と個人面談できるブースで当時大学院生だった牧原先生に出会う。キラキラした目で、「私、有機化学が好きなの。有機化学の研究者になりたいんだ」と語る牧原先生が忘れられず、残りの高校生活を受験勉強に捧げて牧原先生がいる大学に合格した。牧原先生は夢を叶え博士課程修了後同じ大学の薬学部で助教になっていた。牧原先生と研究ができるならと、薬学部の大学院に進学。牧原先生のもとでの研究生活が始まった。

 気づいたら、私は実験室で寝てしまっていた。牧原先生に起こされ心配される。終電を逃した。新人を研究室に泊めるわけにはいかないと、牧原先生の部屋に泊まるよう勧められる。シャワーを浴びて、先生の部屋着を借り、先生のベッドを借り、ドキドキしてしまう。眠れないでいると、先生は私の頭をなでて、「いつも私の期待に応えようと無理してるんだよね。ごめんね」と優しく話しかけてくれた。牧原先生は私と初めて会った時のことを覚えていてくれた。その時からの気持ちを話し、「私、先生とずっと化学がしたいです」と言うと、先生に「もちろん、博士課程でもその後でも私が研究の面倒見てあげる」とはぐらかされる。もう遅いから早く寝るように急かす先生。先生は明日の講義の準備でまだ寝ない様子。先生のことが心配だけど何も力になれない無力感に苛まれる。

 次の日、起きたらもう先生はいなかった。置き手紙と鍵と先生が用意してくれた朝食が机の上にある。先生の気遣いと優しさ、自分の弱さに泣けてくる。先生ことが好きだ。今は無理をしてると心配かけてしまうばかりだけど、強くなって、先生に追いついて、いつか私が先生の支えになりたい。