前日も前日ですが…。 7/17(日)に舞鶴で開催される砲雷撃戦!よーい!二十六戦目にて、サークル「Peak to Peak」で発行する新刊コピー本のサンプルを掲載します。本自体短いお話なのでサンプルもすごく短いですが、まぁこんな感じ、というのを感じていただければ。 当日のスペースは「C-25 Peak to Peak」です。
「はーい、みんな集まってるわね?」
「秋雲がいないんじゃない?」
「えー? もう、仕方ないわねぇ……」
テーブルを囲む面々を見渡し、確かに秋雲がいないことを確認した陽炎は、はぁ、と溜息をついて廊下へと出て行った。
ここは鎮守府の一角、第二駆逐寮の一階にある談話室で、テーブルを囲んでいるのはこの寮で寝起きする陽炎型姉妹の面々であった。テーブルの上には、食堂から取り寄せたオードブルやサンドイッチに、ズラッと並んだ酒瓶とグラスが、つい先ごろ着任した親潮の歓迎会を開催するべく準備されていた。
「歓迎会といっても、こんなに豪華にしてもらわなくても大丈夫だったんですけれど……」
「ええって、そない恐縮せんと」
「そうですよ親潮、せっかくあの陽炎が珍しく手回しよく準備したのですから、楽しむべきです」
「不知火はん、相変わらずキツいなぁ……」
今日の主賓である親潮は、黒潮と不知火に挟まれ、やや緊張した面持ちでグラスを握っている。不知火はいつも通りの無表情、黒潮もまたいつも通りのニコニコとした笑顔だが、今日はどういうわけか親潮の隣にピタリと寄り添い、手を握っていささか親しすぎる感じであれこれと話しかけている。
「黒潮、いささか近くありませんか」
「ん、何かおかしい?」
「……いえ、何でも」
純粋に不思議そうに聞き返されて、流石に不知火はそれ以上突っ込めずに引き下がった。天然なのか、あるいはここまですべて計算でやっているのか、ただひとつ確かなのは、その中々積極的なスキンシップを受けている親潮が、困ったような表情をしつつも全く振り払おうとする気配が無いことだった。
「はーい、秋雲連れてきたわよ」
「やー、ごめんごめん、色々やってたらさぁ、時間になったのに気づかなくてさぁ」
制服姿の陽炎とは対照的に、だらりとジャージを着て、緩く髪を後ろで結んだ秋雲が、頭を掻きながら談話室へと入ってきた。
「遅いぞ、秋雲」
「てか、陽炎が早めに声掛けるべきだったよねー」
「え、私のせいなの!?」
どういうわけか、遅刻を追求する矛先が陽炎に向くが、この面子であればそれはいつものことで、ちょっと驚いた様子の親潮を「こういう物ですから、どうぞ気にせず」と不知火がフォロー、そこに更に陽炎が「こういう物ってどういうことよー!」と吠えるのもまたいつも通り。
「はいはい、じゃあ始めるわよー、えーと、春の大規模作戦お疲れ様、そして親潮、ようこそ」
「はい、陽炎姉さん、ありがとうございます、不束者ですが、よろしくお願いします!」
「おぉー」
「初々しいわねぇ」
「陽炎姉にもこんな時期が......」
「ま、無いわよね」
「ちょっと、それどういうことよ!」
「ほらほら、早く乾杯の挨拶しなさいよ」
連装砲くんにスルメの切れ端を食べさせながら、天津風がはやし立てる。皆が集まる席では、大体こうやって陽炎がいじられ役になるのだ。
「わかってるから、じゃあえーと、これからも色々と大変だとは思うけど頑張って」
「ありきたりねぇ」
「いいから黙って聞く! それじゃあ、親潮の着任を祝して、乾杯!」
『かんぱーい!』
陽炎の少々強引なまとめに何人かが苦笑しつつも、カラン、と十七個のグラスが小気味良い音を立てて触れ合い、わぁ、と集まった皆から歓声が上がった。