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この作品 「小説集 夏のまたたき①「ふたご星変奏曲」」 は「文学」「双子」等のタグがつけられた作品です。

 夏。命の満ちる季節。その一瞬のまたたき、いくつかの同じテーマを題材に綴るシリー...

饗庭璃奈子

小説集 夏のまたたき①「ふたご星変奏曲」

饗庭璃奈子

2016年11月10日 20:51
 夏。命の満ちる季節。その一瞬のまたたき、いくつかの同じテーマを題材に綴るシリーズ小説です。

①「ふたご星変奏曲」
 ナナコとウメは、小学二年生のふたごの姉弟。ある初夏の午後、毎週水曜日におやつを食べに行く〝いちぢく屋さん〟の店先で、ナナコはウメに信じがたい告白をされる。
 ──ぼくの前世はねこだったんだ。
 その日から、毎週水曜日になると前世について語らう、不思議な習慣がはじまる。ウメはかつて、父親に飼われていたねこのミミで、ナナコも前世は母親に飼われていたことりのピピだったのだという。ウメ(ミミ)の口から次第に明らかになる、前世で出会えなかった孤独、双極性障害を患う母親の痛ましい過去。それでもおおらかな父を支えに、家族は均衡を保っているかのように見えた。しかし三年後、事件は起きる。〝美しいうたをつむぐくちばしに、ただ一度、ふれてみたい〟──前世で果たせなかった願いをミミが果たしたその瞬間を、母に目撃されてしまったのだ。
 過去の体験から男性に強烈な不信感を持つ母は、〝ウメは男としてナナコにキスをした〟と決めつけ、しまいには、二人が異常であるかのようなもの言いをしてしまう。父は激怒し、家族会議は両親の離婚話へと発展する。その時、ウメのものともミミのものともしれぬ悲痛な叫びが、部屋の空気をつんざく。家を出て行ってしまうウメ、呆然と取り残される両親。一方ナナコは、自分たちがピピとミミの生まれ変わりであることを、ついに両親の前で明かすのだった。
 三日後、ウメは警察によって保護される。ウメはミミとして、これまで決して言及することのなかったピピとミミの死について語りはじめる。〝ミミが死んだのはわたしのせいだ〟と己を責める母を、ミミはずっと案じていたのだ。ようやく母とわかり合い、前世で果たされなかった〝ピピとの出会い〟という願いも成就したミミは、父と母、そしてナナコに別れの挨拶をし、意識を失う。目覚めたとき、ウメの中からミミはすでにいなくなっていた。
 時は経ち、それぞれ家族を持った二人。自分がかつてミミであったという事実そのものさえ忘れてしまったウメに、ナナコはあの初夏の午後を真似て、告白する。
 ──わたしの前世はことりだったの。

②「玉蟲少年」
 十五歳の少年・穂積は、毎夏の習慣で夏休みのあいだを都会から離れ、田舎の叔父と祖母の家で過ごす。極力二人に迷惑をかけないよう、田園の傍ら、お決まりの木陰で読書に耽るのが代わり映えのしない夏の日課だ。
 ところがその夏、美しく横暴な少年が穂積の前に現れた。「ここは俺の場所だ」と一度は追い払われるも、穂積は何故か玻璃のような瞳を持つ少年のことが気にかかり、再び木陰へと向かう。少年は穂積と同じ十五歳、〝たま〟という奇妙な名を名乗る。どうやらたまにも人並みの感情の起伏はあるらしい。穂積はたまに、この夏休みのあいだだけここで自分の話し相手になってほしいと提案する。
 同じ木陰で時間を共有するうちに、次第に心を通わせる二人。〝寂しい〟という感情を分かち合い、穂積はたまに「来年も、この木陰でまた二人で会おう」と声をかけるも、たまは眼差しを翳らせるばかりだった。
 やがて訪れた別れのとき、たまはとうとう穂積に己の正体を明かす。
「玉蟲の寿命は羽化してから長くてせいぜい二ヶ月だ。ひと夏を生き抜き、そして死ぬ。しかしその翅は死んでも色褪せない。死してなお、その個体の息吹の残り香のように輝き続ける。たった二ヶ月の命だが、俺の生きた証を、穂積、お前に見せたい」
 その告白の直後、一陣の風が吹き、たまは忽然と姿を消してしまう。一匹の玉蟲が穂積の耳朶を掠めて飛び去る。
 一年後。再び同じ木陰を訪れた穂積は、ようやく圧倒的な喪失に気がつき、咽び泣く。
 もういくらも立たないうちに、雨が降り始めるだろう。
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