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この作品 「夢渡り」 は「ピクシブ文芸大賞」「オリジナル」等のタグがつけられた作品です。

佐伯一族は古来よりその特殊な能力をもって、助けを求める者を救済して来た。歴史ある...

枯河凍雨

夢渡り

枯河凍雨

2017年3月20日 21:33
佐伯一族は古来よりその特殊な能力をもって、助けを求める者を救済して来た。
歴史あるこの一族の中には『獏』と呼ばれる者がある。
佐伯の『獏』は悪夢を《喰らう》のではなく、人の心を喰らう夢に《渡る》。
夢の中で夢見る者の不調の原因を探り、夢に籠った悪い空気を祓い、凝り固まった自我の世界をほどく。それによって夢見る者を救済する能力者のことだ。

当代の『獏』である佐伯秋音(さえきあきと)の元にある日送り込まれて来たのは、高城美伽と名乗る痩せ衰えたひとりの女性だった。
高城の夢は、夢の中で自分自身を殺し続ける『身喰い』と呼ばれるもの。しかし彼女の夢の構造は、それまで秋音が視て来たどの夢とも異なっていた。

夢とは本来、自分を中心とした『もっとも自由で、もっとも我儘な世界』だ。
他者の介入を受けない、無意識の自我の世界。それは、酷く脆い、頼りない世界でもある。
己の身の回り、手の届く範囲だけが描かれた、自分だけの世界の真ん中に、自分ひとりが存在している。それが《夢》というものだと、秋音は思っていた。
高城美伽の夢は、秋音の認識を覆すものだった。

青く沈んだ明けの野原は広く、花の咲き乱れる、美しく静謐な世界。
流れる朝霧、梢を揺らす風。深く闇を湛えた、冷たい湖。
誰も居ない、たったひとりきりの世界の中で、少女は古い花嫁衣装を身に纏って自ら死に向かう。他者を排斥し自分だけに向かう《強い感情》を表わさない、ただひたすら青い情景の中を往く少女だけを映す、静かで、淋しい夢だ。

佐伯の過去に例の無いほど、複雑で緻密な構造で編まれた高城の夢は、芸術的な能力が高く映像を加工する知識を持つ彼女に構築された、その《世界》の完成度の高さによって『獏』を危険に晒した。
『獏』である秋音、『獏使い』と呼ばれる補助能力者の従兄の夏彦、『獏』と高城のサポートをする従妹の春歌の三人は、翻弄される。

感情を伴わない、淡々とした自死の『夢』が現実を、彼女を心身ともに蝕んでく。
早く救わねば、彼女の生命が危うい。夢は静かに、けれど確実に進んで行く。
彼女の夢の本質は?
死へ向かう夢の表わす彼女の真意はいったい何処に在る?

何故、彼女は ―― 花嫁衣装を纏い続ける?

夢をほどく風すらも通らないほどに、あまりにも緻密な世界。
解体の糸口を模索する『獏』。
『獏』の手綱を握り、暴走の歯止めを掛けながらもその身を気遣う、二人の従兄妹。

夢の中に厳重に封印された、もうひとつの《世界》の存在の意味とは。
身を蝕む孤独に、彼女が求めた大切な場所とは。
彼女が纏い続けた、花嫁衣装に秘められた記憶とは。
『獏』が『獏』としてある為に、秋音に出来ることは何なのか。

戸惑い、悩みながらも『獏』は今夜も、夢に《渡る》。
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