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この作品「【妖逆門／三不壊】先生がお気に入り２①」は「藤田和日郎」「小説」等のタグがつけられた作品です。

2017年12月30日冬コミ（む28b、TAKE FIVE）にて頒布。新書版、9...

【妖逆門／三不壊】先生がお気に入り２①

蜜井寿里

2017年12月20日 23:14

2017年12月30日冬コミ（む28b、TAKE FIVE）にて頒布。
新書版、96P 800円。
2016年冬コミ発行の「先生がお気に入り」の第２巻です。
表紙はKoGeMaRu通信局（12/30東ニ―21a）のMeetarow様です💛
冬コミまで、ちょこちょこと更新して参ります。

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１

　何事も、始まりがあれば終わりがある。
　すこぶる面白い漫画やアニメも最終回は来るし、楽しい休みには、休み明けが待っている。テレビや雑誌では、しょっちゅう誰かの熱愛が発覚し、幸せそうなツーショットを披露したかと思うと、一年もしない内に「出会いがあれば別れもあるもので……」と別離の涙に暮れていたりする。
　そして今。世の理に則って、一つの地獄が終わろうとしていた。
『……５、４、３、２、１、ゼロ！』
　チャイムが鳴り響く。夏休み明けの実力試験、その最後の科目が終わったのだ。
「ぃやったぁぁぁ！終わったぜぇぇぇ！」
　椅子を跳ね飛ばす勢いで三志郎は立ち上がった。
　周囲のクラスメイトがぎょっと目を剥いたが、知ったこっちゃねェ。鼻歌混じりに鞄の中の教科書を机に放り込み、空っぽになったところに弁当箱だけ放り込んで、「おっ先ィ！」と真っ先に教室から駆け出した。
「ちょっと三志郎！まだ連絡事項が残って──」
　背中で亜紀の声が聞こえたが、もう遅い。誰も俺を止められないぜ。
　まさに韋駄天（名前は多聞だが）の速さで階段を駆け下り、三志郎は一階の東端へと向かった。
　全校生徒の心と体の健康を守る砦にして、憩いとサボりの楽園──「保健室」。
　五日ぶりにそのドアを開けた三志郎は、大声で呼ばわった。
「多聞三志郎、ただ今参上！」
「うるせェ」
　いきなり氷水みたいな声をぶっかけられた。
「廊下を走るなって言ってんだろうが。一か月出入り禁止にされてェのか」
　初秋の明るい日差しを受けて、銀色の髪が煌く。健康な生徒も病みつくほど険悪な顔つきで、保健医が椅子ごとくるりとこちらを向いた。
　今年五月に着任したばかりの彼の正体は、何を隠そう、この世ならざる妖だ。
　凄みのこもった脅し文句も聞き流し、三志郎は季節外れの向日葵よろしく、にっかりと笑った。
「五日ぶりだな、フエ！」

　私立[[rb:妖土 > あやと]]学園中等部。この学校には、大きな秘密が三つある。
　まず、校舎が建っている場所。ここには元々「[[rb:神奈備 > かんなび]]の[[rb:御扉 > みとびら]]」という厄介な代物があった。いわゆるあの世とこの世を隔てる扉だ。「神隠し」と言われる現象は、人がこの扉をくぐってしまうことで起こる。
　学校がその上に建ってしまったのは、まったくの偶然だったが、そのままにしておくわけにもいかない。生徒は神隠しにあうし、逆にこちら側に出て来ようとする妖もいる。
　ここで、二つ目の秘密。困った理事長は、驚くべき行動に出た。妖の長である大天狗に、生徒の教育を頼んだのである。
『生徒が安心して学校生活を送れるように、神奈備の御扉が招く災禍から、生徒を守ってもらえないだろうか』
　そしてゆくゆくは自分たちで身を守れるよう、教育して欲しい。
　大天狗は快諾した。
　そして、三つ目の秘密。大天狗は自らが校長となり、自身が信頼する妖、中でも人と同じ姿を持つ「個魔」を教師として送り込むことにした。
　そうして妖土学園は、教師全員が妖という、前代未聞、唯一無二の学校になったのである。
　教師は、周囲から怪しまれないよう少しずつ入れ替えられ、保健医であるフエは最後の交代要員だった。
　これまた偶然の成り行きから、三志郎は学校の秘密に触れ、フエから託された二つの武器、「撃符」と「撃盤」で、扉をくぐろうとした妖と戦った。
　三志郎は、神奈備の御扉を守る者、「撃符使い」となったのだ。

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何事も、始まりがあれば終わりがある。
　すこぶる面白い漫画やアニメも最終回は来るし、楽しい休みには、休み明けが待っている。テレビや雑誌では、しょっちゅう誰かの熱愛が発覚し、幸せそうなツーショットを披露したかと思うと、一年もしない内に「出会いがあれば別れもあるもので……」と別離の涙に暮れていたりする。
　そして今。世の理に則って、一つの地獄が終わろうとしていた。
『……５、４、３、２、１、ゼロ！』
　チャイムが鳴り響く。夏休み明けの実力試験、その最後の科目が終わったのだ。
「ぃやったぁぁぁ！終わったぜぇぇぇ！」
　椅子を跳ね飛ばす勢いで三志郎は立ち上がった。
　周囲のクラスメイトがぎょっと目を剥いたが、知ったこっちゃねェ。鼻歌混じりに鞄の中の教科書を机に放り込み、空っぽになったところに弁当箱だけ放り込んで、「おっ先ィ！」と真っ先に教室から駆け出した。
「ちょっと三志郎！まだ連絡事項が残って──」
　背中で亜紀の声が聞こえたが、もう遅い。誰も俺を止められないぜ。
　まさに韋駄天（名前は多聞だが）の速さで階段を駆け下り、三志郎は一階の東端へと向かった。
　全校生徒の心と体の健康を守る砦にして、憩いとサボりの楽園──「保健室」。
　五日ぶりにそのドアを開けた三志郎は、大声で呼ばわった。
「多聞三志郎、ただ今参上！」
「うるせェ」
　いきなり氷水みたいな声をぶっかけられた。
「廊下を走るなって言ってんだろうが。一か月出入り禁止にされてェのか」
　初秋の明るい日差しを受けて、銀色の髪が煌く。健康な生徒も病みつくほど険悪な顔つきで、保健医が椅子ごとくるりとこちらを向いた。
　今年五月に着任したばかりの彼の正体は、何を隠そう、この世ならざる妖だ。
　凄みのこもった脅し文句も聞き流し、三志郎は季節外れの向日葵よろしく、にっかりと笑った。
「五日ぶりだな、フエ！」

私立[[rb:妖土 > あやと]]学園中等部。この学校には、大きな秘密が三つある。
　まず、校舎が建っている場所。ここには元々「[[rb:神奈備 > かんなび]]の[[rb:御扉 > みとびら]]」という厄介な代物があった。いわゆるあの世とこの世を隔てる扉だ。「神隠し」と言われる現象は、人がこの扉をくぐってしまうことで起こる。
　学校がその上に建ってしまったのは、まったくの偶然だったが、そのままにしておくわけにもいかない。生徒は神隠しにあうし、逆にこちら側に出て来ようとする妖もいる。
　ここで、二つ目の秘密。困った理事長は、驚くべき行動に出た。妖の長である大天狗に、生徒の教育を頼んだのである。
『生徒が安心して学校生活を送れるように、神奈備の御扉が招く災禍から、生徒を守ってもらえないだろうか』
　そしてゆくゆくは自分たちで身を守れるよう、教育して欲しい。
　大天狗は快諾した。
　そして、三つ目の秘密。大天狗は自らが校長となり、自身が信頼する妖、中でも人と同じ姿を持つ「個魔」を教師として送り込むことにした。
　そうして妖土学園は、教師全員が妖という、前代未聞、唯一無二の学校になったのである。
　教師は、周囲から怪しまれないよう少しずつ入れ替えられ、保健医であるフエは最後の交代要員だった。
　これまた偶然の成り行きから、三志郎は学校の秘密に触れ、フエから託された二つの武器、「撃符」と「撃盤」で、扉をくぐろうとした妖と戦った。
　三志郎は、神奈備の御扉を守る者、「撃符使い」となったのだ。

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