「いつからだろう、胸に燻る何かを残して~♪」
書物に綴じる前、宮司に連絡を入れた。
「青札の枚数が知りたい。」
「青・・・確か11だ。」
「って事は・・・+9で20だろ・・・。悪い、少し寄り道してから行くよ。」
「・・・あいよ。」
自分が共に戦った仲間たちだというのに、肝心な時にどこか欠けてる。顔や特徴さえ分かれば直ぐにこたえられるというのに・・・情けない。そう思いながらも綴じるファイルを増やしてから、幾度と無く・・・いや、場所が変わってしまった神社へ向かっていく。
「歩きはじめる、もう振り返らぬように~♪」
結果として、僕の宿敵になった友人に勧められたのと、僕の無駄な決意で始めたのが1年半前。当時は思ったほど乗り気でも無かったのだが、惰性的にやるには丁度良いかと思っていた。ただ、そこから半年ぐらいになる。つまらない法のせいで、煙草を吸いながら麻雀出来なくなったのを理由に本気でやるようになった。
「何を選んでも、全て拾い集められないから~♪」
といっても、苦難はあった。状況が状況だけに場所を探すところから始まった。幸いといえば幸いなのが、戦える場所が思ったより近くに合った事だったか。そこで、少しずつではあるが、いろいろな戦い方を何となくだけど理解していったのが1年前か・・・。
「現在(いま)の戦場(ばしょ)から、瞳そらさないように~♪」
そして、とりあえずは「これならアイツと戦える」というとこまで辿り着いた。けど、納得できるかといわれると少しだけ足りなかった。自分の始めた切欠から少しづつだけど、目を背けた気がしていた。
「終わらないステージで、戦い続けている~♪」
それが悔しくて情報を洗いなおした。きっと、彼は時間をかけて、自力で見つけた道だろう。僕だって時間を掛ければ何時かは彼が見つけた道を切り拓けただろう。ただ、それだと差は埋まらない。だから、情報を調べて、少しでも自分の納得する答えを友人に、何れ戦う事になる誰かに、そして何より自分自身に見せてやりたかった。
「乗り越えていけるさ、あの日、目指した場所へ♪」
その為に費やした時間、資金は分からない。そして、どれだけ戦友と語れたかも。きっと、時間や資金以上の物は得られたと思える。でなければ、あの日突き付けられた現実を知った僕が取った行動は報われない。
「違うだろ!俺がやりたかったゲームってのは終わりを告げられても、まだ知りたい!って思わせるゲームだっただろ!」と小銭を握りしめ、駆け抜ける事を決めたあの日の自分が正しかったと証明したい。だから
「辿り着ける、そのときまで~♪」
つい先日まで必死こいてやれてたんだろう。重い匣を抱えてさ。・・・先日来たときは、重たかった鞄も、今日来るときは、なぜかとても軽い。紙の重さってのは間違いなくあるんだけど、それだけじゃない。
「・・・だいぶ、時間が掛かったな?」
「これでも早い方だぜ?・・・そういうお前こそ、神社までのアクセスよくなったとはいえ、境内抜け出しやがって。仕事はどうなってんだ?」
「そうさなあ・・・。下手な仕事を蹴ってでも伝えてやりたい願いを抱えちまった。といえば納得するか?」
「・・・感傷に浸るにも戦友は居た方が良いか。」
「戦友なくして感傷には浸れんさ。そして、彼らが再び感傷に浸りたくなった時の為に塔や碑ってのはあるんだぜ?」
「そう・・・だよな。なあ、宮司。」
「なんだ?」
「神社に着くまでもうちょっとだけ感傷に浸らせて。」
「は?」
「・・・やり始めたばかりの時に流れてた曲、結構好きだったんだ。それこそ、いつぞやも筐体に向かうまでに口遊んでててさ。」
「・・・勝手にしろ。」
「・・・ありがとう。」
僕が好きだった曲にエールを貰って此処まで来た。思い出を紡ぐのは戦友と向き合ってからにしたい。だから、境内までの道中を名曲と共に歩んでいきたい。
そう思える日だった。今は戦友との別れを告げて、宮司の代わりにこうして思いを記させていただいた。とうの本人には「頻度が減るぐらいには手記書くの面倒なのと下手な唄に付き合わされた罰だ。」なんて言われたが、彼なりの好意だろう。・・・最後に改めて彼らにこう言わせてくれ。
いつか、僕らが願った未来で逢おう。戦友(とも)よ。
と、だけ。また彼らと共に駆けれる日を心待ちにしてる。