「ボロくなってきたなあ・・・。」
あまり好き好んで使っては無かったが、ヘッドホンが傷んできた。前々から変えようと思っては居たが、何処かで付喪神が憑くのでは?と思うと中々に変えづらくはなっていた。幸い、ボロい見た目ではあったが音そのものを聴くだけなら何てことは無い。
その時に前々から思っていたことは「S社は合わない」という点だった。何処とは言わぬが、一定の信者が居るところだった筈だが・・・と思ってた。それに対して、彼是何年もお世話になってるA社の物にしようと思った。
少しばかり思い出話なのだが、音質に拘りを持ち始めた切欠の一つが先々代のヘッドホンだったのだが、それ以来「この音が出るか出ないかは大きな問題」と心の何処かで思い込んでいた。いや、いまも思っている。
別な用事もあって電気屋に立ち寄った時に見た目に惚れ込み思わず端子を差し込んで少しばかり試聴した。時間としては一曲も聞いていない。ただ、本当に良い道具は如何いうわけか軽く使うだけで分かってしまうのだ。
実際に手で持つ道具であれば、初めて持ったとは思えないように馴染んでいく。それに不思議な感覚だが、道具が「使い方を教えてやる」と言わんばかりで、それに合わせてくだけで使えてしまう。
それが鑑賞に用いる物なら如何か?まるで10年来の友人のような馴染み方をするわけでも、道具から感覚を感じるわけじゃあない。けど、何故か分かるのだ。
その理由は、おそらくだが自分の中の熱を引き出そうとしてくれるからだと思う。これは偏に自分の感覚だが、本当に良い物を使うと何故か皮膚は寒さを感じるが身体が熱くなる。高揚感の一言で済ませれられるのだろうが、そんな一言で済ませるわけにはいかない。
一応、店員には「他の色も見たい」と言ったうえで、惚れ込んだ色とは違うのを買ったのだが、そんなのはどうでもいい。本当に良い買い物をしたと思えた。
・・・改めて聴いても良い物だとわかる。この良さを誰かに伝えたくて伝えたくない、矛盾した心を叫びたいぐらいには良い物だ。
そんな大人げの無い興奮した心持で書き殴ったが、それでも多分伝えきれない熱が両の耳から全身を伝う。
ああ、いいモンだなこれ・・・。