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2021年11月29日(月)〜 2022年3月6日(日)まで開催された、小説コンテスト「第4回百合文芸小説コンテスト」の受賞作品がついに決定しました。
女性同士の恋愛や友愛をテーマにした小説を募集した本コンテストでは、2,200以上の応募作品が集まりました。たくさんのご応募ありがとうございました。
厳正な審査の結果、受賞となりましたのは以下の作品です。
■大賞(両部門合わせて1名)
賞品:賞金20万円、コミック百合姫に扉イラスト・挿絵イラスト付きで掲載
中・長編部門の作品が受賞した場合は、河出書房新社にて書籍化検討
短編部門の作品が受賞した場合は、河出書房新社から刊行予定の百合小説アンソロジーへ収録
『嘘つき姫』/
坂崎かおるさん
〈選評〉
戦火から生き延びた少女、彼女の一人称で語られる物語としての完成度の高さは勿論のこと、嘘で繋がる「姉妹」の関係性に引き込まれました。今回のコンテストを通して、ずしりと印象に残った作品です。(コミック百合姫)
「嘘」と「嘘」のあいだで立ち現れる、「本物」の感情。歴史に取材した濃密な物語を仕掛けのある構成で描く、という難度の高さをものともしない筆力に舌を巻きました。書き出しも見事です。(河出書房新社)
題材の選び方も、物語の構成も、それらをどう書くかという筆致もプロ級。この才能を見逃してはいけません。(SFマガジン)
■コミック百合姫賞(両部門合わせて1名)
賞品:賞金10万円、コミック百合姫にてコミカライズ検討
『人権意識が高い勇者』/
4kaえんぴつさん
〈選評〉
師匠として駆け出しのリザと、居場所のなかった弟子のエレンという二人が、徐々に関係性と恋心を育んでいく日々がとても愛おしく描かれた作品。ファンタジー要素とのバランスも良く、終盤ではそれを生かした見せ場が印象的でした。(コミック百合姫)
■SFマガジン賞(短編部門より1名)
賞品:賞金5万円、SFマガジンに掲載
『汝ら、すべてのゾンビたちよ』/
カスガさん
〈選評〉
時間SFの王道ともいえる題材を、物語の流れとともに丹念にロジックを突き詰めていく「歳の差自分百合」。コメディでありつつ切ないラストへ落としていく構成がすばらしく、百合だから書けるSF、SFだから書ける百合の魅力を味わえました。(SFマガジン)
■河出書房新社賞(両部門より1名)
賞品:賞金5万円、河出書房新社より刊行予定の百合小説アンソロジーへの収録検討もしくは書籍化検討
『あの日、私たちはバスに乗った』/
ねぎしそさん
〈選評〉
奇想小説ふうのトンチキさと青春小説の爽やかさを同居させて百合小説に昇華した、稀有な達成。百合という「フィクション」を物語ることへの自覚もすばらしい、快/怪作です。(河出書房新社)
■書泉百合部賞(短編部門より1名)
賞品:賞金3万円、書泉百合部限定グッズ
『マドレーヌ、あるいは夏の終わり』/
あきやしろさん
〈選評〉
かつての親友の娘を預かることにより、彼女を通してかつての思いを再確認していく……。若かりし頃の想いを新たな形に昇華しているところが前向きで好印象でした。季節を夏にしているところも読後感に一層の爽やかさを加えていて良かったです。(書泉百合部)
■pixiv賞(両部門より複数名)
賞品:Amazonギフト券もしくはAmazonギフトコード2,000円
『綺麗なものを閉じ込めて、あの湖に沈めたの』/
ななめのさん
〈選評〉
明確に夜を描写したい、といった「自分はこれを書きたい!」という所があったのはとてもよかったと思います。夜の徘徊での絶妙な距離感と若干言葉を選びながら繰り広げられる会話が心地よく、引き込まれました。
『知見寺家の蔵には運命が眠っている』/
Ruさん
〈選評〉
気になる点が後から丁寧に解決されていくので、気持ちよく読めました。題材、キャラクター、ストーリーラインのどれをとってもバランスよく及第点以上なのですが、もうひとつフックとなるものが欲しかった感もあります。
『彼方からの呼び声』/
黒川亜季さん
〈選評〉
宇宙生物学者の主人公が、まだ見ぬ天体の話などをしていて壮大で面白かったです。静謐で美しい世界観も素敵でした。シチュエーションを絞った方が瞬間火力が出るのではないかと思います。
『ブルーデイジーの帰還』/
咲川音さん
〈選評〉
読みやすく、感情の重さがよく伝わってきました。玲の患者として価値観の違う人々を登場させることで、多種多様な愛する人との向き合い方を書いているところが面白かったです。美しい話ではあるものの、美しいままで終わってしまったのでそこ以上の驚きがもう一声あるとより良くなると思います。
『白百合たちはまわり、おどる』/
たつた あおさん
〈選評〉
中盤以降の展開にテーマである因果応報の怖さを感じ、女学生を描いた作品として重めな纏め方でとても面白かったです。
ただ、百合については、どの関係性を一番強く描きたいのかが曖昧なまま終わってしまった印象でした。
『殺してないとか今更言えない』/
謝神逸器さん
〈選評〉
共犯関係という甘い檻にお互いを閉じ込めた親友同士の百合で、とても衝撃的な作品。前半から後半にかけての展開にグッと引き込まれ、目が離せませんでした。
『女の敵は女』/
くまたろーさん
〈選評〉
単なる恋愛表現としての百合だけでなく、人間は自由にパートナーを選ぶことができる権利をもつことの象徴として百合を引用している印象があり、メッセージ性が強いなと感じました。異文化を持つ異星人という異分子が、それまで均衡を保っていた社会にもたらす影響をうまく表現していて面白かったです。
『落花不朽、赤耳合縁』/
鹿島さん
〈選評〉
体から離れた耳は本人に音を届けるという役割を持ったままで、二人を繋ぐアイテムとして見事に組み込まれていたのが素晴らしかったです。セリフの少ない二人のやり取りの描写が丁寧で、また場面の切り取り方も上手く引き込まれました。
『あなたのほうこそ』/
矢向 亜紀さん
〈選評〉
空が重い雨の日に赤い傘や薔薇と、色数を絞った実写映画のような空気感を持ち映像的で綺麗な作品だなと思いました。会話をしたことはなく、名前も知らない二人の関係が変わっていく様子がよかったです。
『空っぽの惑星酒』/
鳥原継接さん
〈選評〉
宇宙酒造のアイデアがとても良かったです。エコと人喰いの複雑な関係、酒造会社の本当の企み、明かされる姉の作戦、すべての記憶が溶け合う大団円まで、興奮して読みました。ただ、物語のバランスに対して材料を入れすぎてしまった感があり、説明がどうしても多くなっているところが惜しかったです。
『血と黄金』/
Usickさん
〈選評〉
勢いがあって良いなと思いました。復讐をするまでの心情と、推しと愛しているの違いまで描かれていて、もう一度読みたくなりました。全体に漂うアンダーグラウンドな雰囲気が魅力だと思うので今後も磨いていってほしいです。
『日常侵食型百合風俗<マイ・ディア>』/
橙山カカオさん
〈選評〉
「友達になってくれる風俗」なのに、最後まで本当かどうかわからないという「翻弄されてる感」がしっかり出ていてとても良かったです。依存してはダメと思いながらも、友人として自分を大切にしてくれる琉花に心を傾けてしまうつむぎにどこか共感を覚えました。
『幽霊が空を想ってくれたから』/
わかしまさん
〈選評〉
王道な青春感のある百合作品。キャラクターもしっかり立っていて、互いに生きづらさを抱えている二人が最終的に寄り添って歩いていく。二人の行く先が、どう転んでいくか最後までハラハラしましたが、しっかり良い形で終わってくれていたところがすごく良かったです。
『海の魔女は愛を知らない』/
さちはらさん
〈選評〉
海辺の魔女×人間。人魚姫の物語のアナザーストーリー的展開が描かれており、世界観にも惹かれるものがあります。ただ元ネタのある作品ではあるので、原典からどれくらい離れられるか、変えられるか、というところにもう少し面白さが欲しかったです。文字数的にももう少しコンパクトにできるのではないかという印象です。
『使用許諾契約』/
TYPE33さん
〈選評〉
インターネット黎明期から現在に至るまでの系譜を一つながりにした、印象的な作品でした。
惹かれる人にはトコトン強いタイプの作品ですが、そういった読者を強く沸かせるためにはもう一声欲しいところです。
『振り返らない少女たち』/
まつきりんさん
〈選評〉
文章の端正さは群を抜いていました。すべての面でハイクオリティな作品ですが、核となるアイデアを含め、何かひとつ突き抜けているものがあるかと言われると弱かった印象です。
■全受賞者副賞
短編部門:2022年にピクシブより発行予定の小冊子へ収録
中・長編部門:pixivノベルへ掲載
受賞者のみなさま、おめでとうございます。
受賞作は今後、コミック百合姫へのイラスト付き掲載や、書籍化・コミカライズ化の検討が予定されております。
また短編部門の受賞作は2022年夏頃発行予定の冊子「百合文芸小説コンテストセレクション4」に収録予定です。今回の表紙は、現在pixivWAEN GALLERYにて
初個展「水に溺れて夢を見る」を開催中の
美和野らぐさんに描き下ろし頂きました。展開を楽しみにお待ちください。
この度はたくさんの作品をご応募いただき、ありがとうございました。今後もpixivに投稿されている百合文芸小説をお楽しみください。
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