初のコピー本として同人誌発売に向けて書いてるのですが、なにぶんテーマがギリシャ神話な為にうまく伝わるかどうか不安なので、わかりにくいところをピックアップしてもらえたら嬉しいです。まだ書き途中で半分くらいなので、全部流れ書き出してからの手直しになりますが……
よろしくお願いしますm(_ _)m
自分はとある女神の箱の中にずっと隠されていた。暗く、狭く、少し肌寒い場所。ずっと自分はその中にいるものだと思っていた。それがある日、自分の持ち主だった愛と美と性の女神からまた別の女神に箱ごと自分は預けられた。
「悪いけど、少しこの箱を預かっていてくれるかしら。中身は決して見ないで欲しいの」
「構わないけど……」
「よろしくね」
これから先、どうなるのだろうか。ずっと震えていた。あまり箱は大きくなく、自分の体がちょうど入るくらいのサイズであまり動くことはできなかった。それが突然、頭にかかっていた蓋が取り払われた。誰かが、自分の周りの世界を破壊した。恐る恐る、上を見る。
「まあ、美しい顔をした可愛い子!」
預けられた先は冥界だったらしく、薄暗く寒い世界ではあったが、箱を開けた冥界の女王がとてもダンス好きで、よく相手をさせられた。常に白い服を着せられていた為に、周りからは白服と呼ばれ、2年ほど肉体が死を迎えた魂の導き方と死化粧について学んだ。死者は特に多くを語ることはなく、静かだった。少しだけある幼少期の記憶に、人間についての記憶がある。とても、騒がしくけばけばしく、必要以上の言葉を放つ。長い間箱の中に閉じ込められていた自分にとって、静かなここはとても心地が良かった。
冥界に預けられてから数年経ち、自分がある程度大人になったとき、自分を預けた女神が冥界の門を叩き、白服を返してほしいと言ってきた。
「まあ、どうして?数年間も貴方は一度も顔を見せずに私達のもとにこの子を置いてきぼりにしたのに」
「預けたものを取りに来ただけよ。彼を拾ったのは私です」
女神達はいがみ合った。美しい青年に成長した白服は、女神達も結局人間と同じように些細なことでいがみ合うのだと。
いがみ合いは数日にわたった。何度も怖い顔で女神達は白服にどちらにつくのかと迫った。誰かと対峙して話すことができるはずもない自分に、鬼気迫る表情をした女神二人に詰め寄られてどうしてうまく答えることができようか。何を言って
かと言ってあんな家畜より少し知能があるだけの下等生物の世界から連れ出してくれた女神を無視するわけにもいかない。彼女は美の女神だ。冥界で培った自分の美学についてさらに成長できる何かを知っているかもしれない。
口を開けて閉じてを繰り返しているだけの自分を見て、彼女達はそれにもまた腹が立ったのかその後も喧嘩は続くことがしばしばあった。
このままでは埒が明かないと、周りの神々達の勧めもあり、彼女達は神々の裁判所に赴いた。
「白服はどちらのものですか!公平な審判をお下しくださいませ!」
正義の女神が、二人の話を聞き、そして白服に目を向ける。
「お前の意見が聞きたい」と。
鋭いいくつもの目線が刺さるように突き刺さる。元来脆かった心は、ここ最近の騒動で心労が、パンパンに膨れ上がった風船のようになっていた。向けられた視線は、鋭い針のように感じられ、耐えられなくなった白服はガタガタと震えながら大粒の涙をこぼし、その場にへたりこんでしまった。
正義の女神はやれやれと言った表情で裁判官に命じて椅子に座り直させ、白服に気付け薬を飲ませた。白服が落ち着いたところで、よく通る声が、判決を下す。
「判決を言い渡す!1年のうち3分の1は冥界の女王のもとで暮らし、また3分の1は愛と美と性の女神のもとで暮らしなさい。そして残りの3分の1は、白服、貴方の自由に暮らしなさい」
天界の裁判所の判決は絶対である。いがみ合っていた女神達はこの平等な判決に黙るしかなかった。
「他に何かなければ閉廷します」と言う正義の女神に、白服はやっと声をあげることができた。ここで言わなければ、きっと手に入らないものだと思ったのだ。
「ぼ、僕に……もう一つ、全く違う姿をください」
そうして与えられた姿は、真っ白なカラスの姿であった。羽の一つ一つは純白で、瞳は透き通った琥珀色をしていた。与えられたものは新しい姿だけではなかった。
「貴方は今まで白服と呼ばれ続けてきたのでしょう。私達神にも、名があります。それなのに名がないというのは不自然でしょう。これからはイソップと、そう名乗りなさい」
こうして新たな名と姿