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そう言うと、領主様はジュジュの前を歩き始めた。ヒカリゴケは、洞窟のここそこに群がって静かに光を放っている。
「こんなに輝いているのって、初めて見たわ。まるで洞窟を案内してくれてるみたい」
心細さが無くなったジュジュは、うっとりとロマンチックな気分になった。 そして洞窟を抜けた時、目の前に真昼の明るさが広がった。草原が広がり、遠くにお城が見えた。ジュジュは思わず言った。
「あれは、領主様のおしろですか?」
「ウム。キミ、その汚れた服を着替えるかね」
「エエ」と返事をしたらあのお城に入れるにちがいない。おかしの家じゃなくってお城だわ。ジュジュはシンデレラにでもなったような心地がした。興奮して足が宙に浮いているようだ。領主様の後について、ふわふわとした足取りで歩いた。領主様は少し首を前に出し、両手をポケットに突っ込み、猫背気味に歩いている。何だかトリビアに似てる。トリビアも、無口になった時あんな歩き方してたわ。ジュジュは、領主様に追いつこうと、小走りに走った。領主様はジュジュを振り返った。眉間にしわを寄せて、強い視線をグッとジュジュに向けた。
トリビアの顔だ。懐かしい。青空のような明るい瞳が突然曇り、鋭い視線を私に寄越した時、しびれるように心がうずいた。私はこの視線に取りつかれたのだわ。今ここにトリビアがいる。人の心って移ろいやすいものよ。また私に気持ちが移ったのよ。ああ、そんなはずないわ。私夢見ているんだわ。薬の花を取りに森に入った夢。そしてトリビアが私の心に戻って来た夢。夢なら何を思ってもいいわよね。結婚は紙切れで縛れても人の心は縛れないわ。心は自由よ。恋はつかみどころのない幻想。私は自分に正直になるわ。そう思った時、指輪は熱く熱を帯び、ジュジュの指を焼いた。ジュジュは思わす指輪を外した。