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艦これSS倶楽部

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  • 【SS構想仮置き場・22】

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    > エルムさん

    黒煙くすぶる砂浜へ上陸する提督たち。

    ここでようやく提督は金剛から下り、“播磨”から持ってきた20式小銃を構える。
    これは上陸作戦を鑑み、特に防錆と排水に優れた性能に目を付けて鎮守府の武器庫から持ち出してきたものだ。

    「私も提督に同行するわ、やっぱり近接戦闘出来る者がいなきゃね(笑)
    霞…貴女は残った二水戦の子達を率いて、母艦を守っていてくれる?」

    「あっ…雪風も行きますっ!!
    水上戦もひと段落付きましたし、もう雪風のサポートがなくてもなんとかなりそうです…。
    浜風さん達、十七駆の皆さんは…ごめんなさい、残っていてもらえませんか?
    有力なコ達も母艦防衛に回ってもらわないと…」

    「はいはい、指揮に慣れた熟練がいなくなったら面倒だもんね…私が旗艦引き継いでおくわ。
    矢矧、雪風…無事に戻ってくるのよ?」

    頷く浜風以下の十七駆、そして分かってたというように肩をすくめる霞。
    それを見ていた夕立は、傍らの時雨や朝潮に目を向けた。
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      > エルムさん

      「…時雨」

      「嫌だね」

      「まだなんにも言ってないっぽい(笑)」
      「僕も付いていくよ?」

      「朝潮はどこまでもご主人さまに付いて行って、お守りしなければなりませんのでッ!!」

      「ここは少数精鋭で行くべきっぽい、あんまり大人数でもアレなのよね…。
      それに矢矧が言ってた通り、母艦を…帰る場所守っててもらわないと。
      だから雌犬隊で行くのはあたしだけでいいっぽい、あとは頼んだわよ?」

      「はぁ…僕だってご主人サマの犬なのに…」

      「ご主人さまぁ…朝潮は、朝潮は…(泣)」

      「夕立の言う通りだ。ここは少数精鋭で行く、みんなは母艦を守っててくれ…必ず戻ってくる」

      提督の言葉で時雨は溜め息とともに頷き、朝潮も最後まで難色を示していたが折れる。そして…

      「…江風」

      「…姉貴…」

      ガシャ

      「離脱しなさい。これは餞別よ…無いよりはマシっぽい、コレでみんなと母艦をお願い」

      ごく自然な動作で夕立は制服のスカートをまくると、フトモモに巻かれた弾薬ベルトから予備のロケット魚雷を江風の発射管に装填した。

      「待ってくれ姉貴、コレ…姉貴は丸腰じゃんか!?」

      「あたしにはもう必要ないわ、魚雷型クナイと手持ちの主砲だけで十分よ♪」

      「あ、あね…」

      「提督さぁん、あたしも連れてって欲しいっぽーいっ♪」

      切り札を自分に託すという事は…つまり生還を期さないという事ではないのか、主砲弾だってそれほど余裕はないだろうに。
      江風はそう言葉をかけようとするも、夕立はいつものお気楽な表情を浮かべて提督の元へ走っていってしまう。
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        > エルムさん

        眼前にぽっかりと口を開けた、いかにもな手掘りのトンネルがある。

        提督は小銃を構え、ためらうことなく走り始めた。
        その後を、夕立・矢矧・雪風・金剛・長門・陸奥・鈴谷・熊野・榛名・比叡・霧島・加賀が続いていく。

        「Darling、急ぐのはいいんだケド…敵が潜んでるかもしれないワ。危ないワヨ!?」

        「その通りだ提督。ここは私達が先頭に立つ、ゆっくり慎重に…」

        金剛や長門が性急に駆けて行く提督へ声をかける。
        だが提督が首を振り、足を緩めることはなかった。

        「急ぐさ、たとえ進むこの道が敵の罠でも。
        邪魔する敵は倒す…金剛も長門さんも俺の背中越しにサポートをしてくれ」

        軍服の上着は捨ててきたため、薄暗いトンネル内に白のワイシャツが目立つ。
        金剛と長門は苦笑いし、夕立や矢矧・加賀と言ったメンツは怯まない提督の背中を頼もしそうに見つめた。

        「はは、指揮官先頭を地で行く…か。
        いいだろう、私達が全力で支援する…提督は鳳翔を救い出す事だけに集中してくれ」

        タタタタタ…

        白いワイシャツ姿の提督の後を、爛々と真紅の瞳を輝かせた夕立・白い鉢巻きと刀を提げた矢矧・セーラーワンピースが眩しい雪風・防弾コートを羽織った長門・陸奥、艤装制服の白い袖をひらめかせた金剛姉妹・長大な和弓を携えた加賀が続く。

        やがてトンネルの暗闇に呑まれ見えなくなったのを確認した雌犬隊の時雨、二水戦の霞は敬礼したのち、それぞれ残存の仲間へ指示を出すと一斉に回頭…艦娘母艦“播磨”へ戻っていくのだった。
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          > エルムさん

          タタタタ…

          「元々は火山活動…それもつい近年出来た天然の洞窟だったんだろう。
          港湾棲姫や集積地棲姫だか知らんが、連中の工兵部門に相当する輩が整備したと…補給基地としては十分すぎる出来だな」

          「通路は補強程度に済ませてるケド、hallやroomはしっかりコンクリートで設えてるワネ…。
          もしかしたら、このどこかのroomに鳳翔サンがいるのかもしれないワ」

          行く手の左右に点在する頼りなさげなランプを見ながら、長門と金剛は呟く。
          なお、ランプには電気ケーブルが伸びており、恐らくは火山島を活かした地熱発電なのではないかと思われた。

          通路の地面や壁面こそ地肌むき出しだが、それでもケガをしないよう整地はされているらしく、ランプでも照らしきれぬ薄暗い通路を駆けていても転倒するような躓きはなかった。

          「部屋のどこかに鳳翔さんがいるっぽい?
          あたしが探してみるわ、チョット待って…クンクン、この部屋ァっ!!」

          夕立が犬そのもののように鼻先をヒクつかせながら、ある部屋の前で何かのニオイを感じ取る。
          バンッ!と勢いよく開け放った扉の奥には…

          キキ、ギギギッ…

          「ぽォッ!?」

          そこにいたのは砲台小鬼だった。
          素っ頓狂な叫びと共に主砲を構え、同じく砲口を向けてきた小鬼と相撃ちに近い形になる。

          ドンッ!ドンッ!

          「夕立っ!!」

          「ちぃッ…。だ、大丈夫っぽい、なんとか捻って掠り傷で済んだわ」

          脇腹部分の制服が裂け、押さえた手に血が滲んでいるも、彼女の言う通り大した傷ではなさそうだった。
          しかしこの音を聞きつけたのか通路に面したそこらじゅうのドアが開き、砲台小鬼が現れて一斉に迫り始めた。
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            > エルムさん

            「まずいな…だが、ここでヤツらを潰し回ってるヒマはない。
            かといって無視すると、背後や側面から挟撃される可能性がある…」

            「それよりも、もっと深刻な問題があります…皆さん。
            私の分析ではこの“拠点”内部における戦闘で、艤装はほぼ使えないという致命的な制限が…」

            霧島の報告に金剛姉妹はもちろん、長門と陸奥も顔をしかめる。
            分かっていた…霧島に指摘されなくとも。

            「駆逐艦娘の12.7cmならまだしも、我々戦艦の主砲はこの洞窟内では使えん…撃ったら最期、崩落してしまう事か」

            「・・・Shit」

            長門の苦々しげな口調に思わず舌打ちする金剛。
            主砲を封じられたなら、あとは副砲代わりの長10cmや機銃しかないが…。

            「問題はこの先、砲台小鬼以上の敵が現れた場合…ね。
            今いるメンバーから必要以上に戦力は割けないし…よし、じゃあ私と夕立さんが残るわ。
            提督、貴方は先へ行って鳳翔さんをお願い…あとから追い付くわ、きっと」

            スラリと愛用の刀を抜きながら、矢矧は微笑んでみせる。
            対深海棲艦の接近戦にも使える艤装用の刀を持ち、神通の薫陶を受けた彼女なら、夕立と肩を並べて奮戦出来るだろう。

            「他に方法はないのか…分かった。背中を頼みます、夕立に矢矧さん」

            「ま、あたしもクナイがあるから、タマ切れになったとしても戦えるわ。ホラ、とっとと行ったっぽい(笑)」

            「フフ、阿賀野型をナメてもらっちゃ困るわね…任せてっ♪
            雪風、貴女は最後まで提督に同行してちょうだい…今は貴女の幸運が必要なのよ。いい?」

            「はいっ!! 必ずっ…!!」

            余裕を見せてヒラヒラと手を振る夕立と、これみよがしに提督へ色気のあるウィンクでアピールしてみせる矢矧。
            矢矧に頼まれた雪風は思わず敬礼で答える…敵の大軍相手に殿を務めたフネがどうなるか、よく知りながら。
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              > エルムさん

              「…夕立、矢矧さん…。俺は…鳳翔さんを助けるために…」

              「それ以上言うんじゃない、提督。
              私達はそれを承知で付いてきたんだ…なに、フネの頃に比べれば確実に対抗出来ると分かっているだけマシさ」

              「はー…。アタシの知ってるTさんは、こんななっさけないオトコじゃないんだケドなァ~?
              そんなんじゃコッチまでヤル気無くしちゃうからサ、カンベンしてって(笑)
              最後に鳳翔さん助け出せれば万々歳なんだよ?
              鈴谷さんも頑張るからサァ、帰ったら1週間くらいお休みちょーだい?♪」

              「ファイトですわ、提督っ!!
              これだけのメンツを連れてきて、失敗するとかあり得ませんわ。
              そうですわね…わたくしも、終わったらプリンパフェを所望してもよろしくて?(笑)」

              「あーッ!? ズルいくまのん!!
              Tさんのオゴリっしょ、このチャンス逃がすんじゃなかった…アタシもアタシもっ♪」

              きゃいきゃいとにわかに騒がしくなる様子に肩の力が抜けるのを感じた提督は、つい場違いな妄想してしまう。

              「今それを言うのか、お前ら(笑)
              でも、そうだなァ~…これだけ頑張ってくれる皆の分もあるし、奮発しちまうか?」

              「…では、私もパフェを希望してもよろしくて?」

              遠慮がちに口を挟む加賀に一瞬黙る提督。
              暴食ではないが、赤城に次ぐ“大食艦”なのだ…迂闊に頷いてしまったら、どうなるか分かったものではない。
              彼の思惑まで先読みしてしまった彼女はいつものクールな仮面を捨てて、プクゥッと頬を膨らませ拗ねてしまう。
              慌ててなだめる提督を見て、僅かながら緊張の糸を解く長門達。

              だが、しばし心の休息が出来た分の反動は大きかった。
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                > エルムさん

                ドォンッ!

                これまでとは桁違いに規模の大きなホールへ足を踏み入れた瞬間、聞き覚えのある砲声が響き、長門の脇に居た陸奥が弾け飛んだ。

                「陸奥っ!!」
                「陸奥さんッ!?」

                「くうッ…不意を突かれるなんて…。
                ううん、私は大丈夫よ…ただ、艤装の第三砲塔が吹き飛んだみたい。
                仮にも戦艦の重装甲な主砲を撃ち抜き破壊するなんて…これは、敵も戦艦級ね」

                地肌むき出しの壁面へ叩き付けられるも、なんとか起き上がった陸奥。
                だが艤装の砲塔が1基吹き飛び、誘爆したのか付近の長10cm砲も全壊してしまっている。
                少なくとも、艤装を使った砲撃戦では不利に陥ってしまった。

                「…来ルノハ分カッテイタ、コノ先ハ通サナイ。
                アノ人ノ命令ダ…イヤ、命令ナド…ナクトモッ!!
                サァ、オマエ達ノ“鎖”ヲ見極メテヤロウ…来イ」

                「コノ火山ノ地ニ叩キ伏セテヤル…。
                マサカ…深海棲艦ガ陸デ戦エナイト、思ッテイナイダロウナ!?」

                2体の深海棲艦がいた。
                広いとはいえ屋内…艦載機を飛ばすにはやや難があるはずの頭上には、深海夜間水偵がいる。
                見覚えのあるシルエットの戦艦棲姫改、そして…。

                「南方棲戦姫だとっ…!!」

                今や現存する鎮守府の諸提督の大半が遭遇していないであろう、希少種な深海棲艦の名を長門が叫ぶ。

                巨大なツインテールは共通しているが…よく見ると、瞳の色や髪飾り・主砲の砲身などの色が赤ではなく青い。
                それもナ級のように紫に近い青だ…さらに黄色いオーラを纏っている。
                さしずめ、“南方棲戦姫・改”とでも区別すべきか。

                「見るだけで南方棲戦姫のガワだけ、みたいなツワモノオーラマシマシのsilhouetteですネー…。
                よりにもよって大和・武蔵タチがいない時に、満を期して登場デスカ…(苦笑)」

                「お姉様、どうするんです!?
                いくら改二改装受けてあるとは言え、私達金剛型でアレを相手するのはどう考えてもっ…」

                陸奥を抱き起こした長門が南方棲戦姫に似た別物であると悟って唸り、同じくそれに気付いた比叡・榛名が金剛を見る。
                霧島は分析システムを内蔵したメガネのフレームを摘まんだまま、冷や汗流すばかりだ。
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                  > エルムさん

                  「…すまないが、なんとか通してもらうわけには…いかないかな?(笑)」

                  苦笑いを浮かべた提督が、場違いなフレンドリーさで話しかける。
                  そのアホらしい問いかけに2体の深海棲艦は…応じた。

                  「・・・行ケ」

                  思い切り理解出来ないという顔をした提督が最初はジリジリと、すぐに意を決して離れた位置を駆け抜け、金剛達も続こうとする。
                  だが…抜けられたのは、金剛と加賀だけであった。

                  「比叡、榛名、霧島っ!! Shitっ、こうなっタラ…!!」

                  「…アノ人ハ、最奥デ待ッテイル」

                  「……!? お前達は一体…」

                  それ以上提督の問いには反応せず、何か思う所があるのかジッと見つめていた戦艦棲姫と南方棲戦姫。
                  ふいに引き剥がすように視線を長門達へ戻すと、主砲を構えるのだった。

                  「提督、ここは我々が相手取る。これだけメンツがいれば何とかなるだろう…行けぇッ!!」

                  長門の言葉に弾かれて走り始める提督と金剛。
                  榛名・鈴谷は何とも言えぬ表情を浮かべて、その背中にエールを送る。

                  「…またね、Tさん」
                  「提督、お姉様…。どうかご無事で…」
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                    > エルムさん

                    「ま、それしかないワネ。
                    ワタシと加賀サンだけで左のtrap-routeへ行くようなムチャは出来ないからネー^^;」

                    「…高速戦艦と空母のわずか2人で一体どこまで出来るのか、甚だ疑問ではあるけれど」

                    そして巨大な扉を開け放った瞬間、提督たちは足を止める…一歩先が断崖絶壁になっていたからだ。
                    火山活動で出来た造形なのか、断崖同士を一本の天然の橋が結んでいるだけだ…そして橋はさほど幅があるように見えない。

                    「………」

                    「…加賀、どうした?」

                    「…来るわね、これは…」

                    「来るって、何が…「走って、darlingっ!!」金剛!?」

                    キョロキョロと天井の見えぬ頭上の闇を見つめ、加賀が呟く。
                    提督が尋ねようとした瞬間、頭上の闇から一斉に深海艦載鬼が急降下してきた。

                    キィィィッ!

                    叫び声とも急降下の音ともつかぬ金切り音がこだまし、橋を渡っていた提督は思わず耳を塞ぎ立ち止まってしまう。
                    先に渡り終えた金剛がムリヤリ手を掴んで引き寄せるが、急降下爆撃で橋を破壊され、加賀は自分達が走ってきた対岸の台場に取り残されてしまった。

                    「か、加賀!? 待ってくれ金剛、加賀が向こうにッ…」

                    「手遅れヨッ、むこう側に渡る方法がないワッ!!」

                    崩落した橋の残骸は深い谷のような裂け目に呑み込まれ、落ちたら艦娘といえども即死は免れないだろうと思われた。
                    加賀は表情を変えず無言で谷と対岸の提督達、乱舞する深海艦載鬼を見ると、ようやくフッと微笑を浮かべた。

                    「…あなた、金剛さん。私は大丈夫…お母さんを頼むわね?
                    早く・・・行きなさいッ!!」

                    頷いた金剛は折れんばかりの強さで提督を引っ張って、遠方にボンヤリとランプで照らされた扉へ駆けて行く。

                    「…全機発艦、空対空兵装。補給は無い…覚悟を決めるのよ、妖精さん達」

                    手持ちの烈風を矢に込めて全て放ち、加賀はおもむろに片腕を突き出す。
                    艤装の飛行甲板と弓が消え、代わりに巨大な主砲と装甲板が出現した…長門達のように防弾コートも羽織っている。

                    「…艤装変更。“戦艦加賀・改二”、参ります。
                    艦載鬼だけ飛んでいるなんて不自然だもの…そこにいるんでしょう、空母棲姫?」

                    「サスガ空母、気付イテイタノカ。ナラバ…火ノ塊トナッテ、奈落ヘ落チテシマエッ!!」
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                      > エルムさん

                      相変わらず薄暗い洞窟の中を駆けて行くと、脇に1つだけ部屋があった。
                      急ブレーキをかけて立ち止まり、金剛が片手で提督を制して背後から加賀が弓を構える。

                      駆けてきた以上気付かれているだろうが、それでも足音を忍ばせて部屋へ侵入すると…そこには誰もいなかった。
                      ただ…誰かが眠っていたらしい大きなベッド、壁に見覚えのある艤装用和服が掛けられている。

                      「これは…鳳翔さんの…」

                      「…お母さんの着物で間違いないわ。という事は、ここに捕まっていたと見るべきなのかしら?」

                      「まだ微かに温もりがシーツに残ってるワネ…さっきまでいたのカシラ?
                      拉致されてからそのままココへ…? 暴行された形跡もない…深海棲艦タチは、一体どういうつもりなのカシラ?」

                      鳳翔の着物を手にした提督は通路へ戻り、行方を探そうとする。

                      「コッチが来た道、向こうか…だが二股になってるぞ?」

                      「…待って、あなた。
                      今、偵察機を出すわ…暗いから気をつけるのよ、彩雲」

                      提督の肩に手を置いてとどめた加賀は、2機の彩雲を弓から撃ち出す。
                      だがもとより夜間能力の無い偵察機であり、いくら基本性能が良くても任務を達成できるとは思えなかった。

                      『彩雲1番機より加賀、分岐点右はランプと非常に大きな扉あり。彩雲2番機。分岐点左は風の流れあるも明かりナシ…敵が潜んでいる可能性大』

                      彩雲妖精の報告に眉をひそめる提督。
                      右の分岐は…恐らく今回の件で鳳翔をさらったボスがいるであろう、ランプと大きなドアもその可能性を補強している。
                      左の分岐は空気の流れがある事から、外界へ通じている脱出ルートとそれを阻止する敵がいると思われた。

                      「…右だ。鳳翔さんを拉致した張本人と決着をつける」

                      「ま、それしかないワネ。
                      ワタシと加賀サンだけで左のtrap-routeへ行くようなムチャは出来ないからネー^^;」

                      「…高速戦艦と空母のわずか2人で一体どこまで出来るのか、甚だ疑問ではあるけれど」

                      そして巨大な扉を開け放った瞬間、提督たちは足を止める…一歩先が断崖絶壁になっていたからだ。
                      火山活動で出来た造形なのか、断崖同士を一本の天然の橋が結んでいるだけだ…そして橋はさほど幅があるように見えない。
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