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艦これSS倶楽部

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  • 【SS構想仮置き場・23】

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    > エルムさん

    「…じゃあ私達は先に出るわ。
    大和、貴女は“着付け”が終わったらゆっくり出てきて頂戴。
    貴女を待っている“人々”へ、その姿をジックリ見せつけるためにね?」

    「分かったわ。先に艦隊の整列と指揮、お願い」

    「…似合ってるな、大和。
    フネの頃も艦娘としての現在(いま)も、本当に美しい…あの頃、私の乗組員達もどれだけの者が見惚れていたか」

    「ふふっ、ありがとう冬月さん。
    でもこれは、貴女のお披露目でもあるから…胸を張ってもいいのよ?(笑)」

    頷いた冬月は矢矧の後に続いて工廠のゲートをくぐり、外界の光の中へ消えていく。
    残された大和は自分の胸元や腰元、足元を確認していく。
    背後では明石が大型の両開きスタンドミラーを持って立ち、大和が最終確認をしやすいようにしている。

    「艤装制服の上に羽織った、膝下まで丈のある薄桃色の着物・桜飾りのついた大きな簪…。
    ちょっと意識しすぎじゃないでしょうか、明石さん?(汗)」

    「これでいいんですよ大和さん、イメージは大事。
    “花魁”…それがフネの時も今も、貴女の共通イメージなんですから。
    矢矧さん達は従者の役…つまり、この式典は貴女の花魁道中なんです(笑)」

    「お、お父様ぁぁ~~っ!!(泣き笑い)」

    さすがにこれはやりすぎ、羞恥心が…と心の中で叫びながら泣き笑いを浮かべる大和。
    そして…とん、と背中を押さた勢いのままに微速前進を始める。

    眩しさに目をしかめつつ和傘を差しながら、しずしずと湾内へ進み出て行く。
    目が慣れてきたので和傘を後ろへずらし顔を上げると、目の前に雪風が手を差し出していた。

    「改二改装おめでとうございます、大和さんっ!!♪」

    冬月・涼月・初霜・浜風・霞・磯風・朝霜が両脇に、そして一番奥…湾外の方向に矢矧が腰に手を当てていた。
    雪風の声に全員が振り向いて笑う…より美麗になった大和への称賛、あるいは茶化し、あるいは遅れた事など様々な意味を込めた笑みだ。
    大和もつられて笑う…そして一言。

    「“やっと”…全員揃ったのね…。これで征けるわ」

    ワアアアアアアッッ!!

    湾内をどよもすほどの歓声が響き渡ったのは、その時だった。
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      > エルムさん

      「……!!
      すごい、式典を見に来てくれた方々があんなに…」

      「私のお披露目でもあるはずなんだが…。
      ご覧の通り、この軍港に詰めかけた群衆のお目当てはただ1人、大和だ。
      さすがに77年前から変わらぬ国民的英雄艦には敵わないな…ふふ(笑)」

      「いえお冬さん、ちゃんと私達を見に来てくれている方は…」

      「分かっているさ、涼。
      だがまぁ…この群衆のどよめきに比べたら、ささやかなものだろう?(笑)」

      苦笑いを浮かべる冬月だが、実はちゃんと彼女を目当てにする者たちも来ていた…北九州エリアからはるばる遠征してきた、“軍艦防波堤委員会”がそれだ。
      岸壁の一角に陣取り、横断幕まで掲げてこちらへアピールしているのを冬月と涼月はしっかり見逃さなかった。

      式典とはいえ、ほとんど何も出し物など用意しておらず、唯一といえば岸壁の柱に掲げられた大型ポスター程度のものである。

      “サクラサク サクラフブキ サクラマイチル”

      フネ時代の大和を背景にした桜の写真に、このような文字を被せたデザイン…質素だが、これで十分に意味は通じていた。

      ザザザザッ

      「改二改装おめでとうございます、大和さんっ!!
      外洋へ出るまで、潮たちが先導役をさせてもらうコトになったのでよろしくお願いします。
      あ、それと…実は旗艦は潮ではないんです(笑)
      コッチの響ちゃんでもなく、新たに着任したコでして…」

      「なんでも昨日、横須賀艦娘養成学校を繰り上げ卒業した、成績優秀な素質抜群の海防艦娘らしい。
      さ…キミ、自己紹介をしてもらってもいいかな?」

      ??:「は、はいっ!!(汗)
      先日、横須賀の艦娘養成学校を卒業し、呉へ配属になりました海防艦“志賀”です。
      “あの作戦”の時にお会いした大和さんにもう一度、お姿を拝みたくてっ…」

      追いかけるようにやってきた潮と響、そしてやや遅れてもう一人の見知らぬ艦娘がやってくる。
      その容姿からしていわゆる海防艦娘だと想像できたが、名前を聞いた大和は軽く目を見開いた。

      「志賀って…あの時の海防艦の子!?(汗)
      そう、なるほど…。お気持ち、非常にありがたくいただきます。
      それでは先導をお願い出来ますか?」

      「はい、了解しましたっ!!
      潮さん響さん、艦隊より前進…ソナーにて対潜哨戒ですっ!!」
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        > エルムさん

        やや身をかがめて微笑みかける大和に、志賀はしゃっちょこばって敬礼する。
        彼女も雪風のような歴戦かつ、波乱の生涯を送ったのだが…憧れの戦艦を前にして、見た目通りの子供へ戻っていた。

        軍港に詰めかけた群衆の多くは呉市民で、ゲームやメディア人気による若い世代だけでなく老年世代も少なくなかった。
        大和を中心に改めて艦隊陣形・輪形陣を組み出撃の準備を整えるその姿を眺め、ある者は憧れの眼差しを、ある者は遠い昔に見た在りし日の勇姿を重ねる。

        「やっぱイイな…。戦艦大和は今も昔も、呉の誇りなんだ」

        「ワシには見える…。ヒトの姿? いや違う。
        ワシの目には今も見えているよ、あの頃の勇姿が…紛れもなく大和じゃ」

        海防艦娘の“志賀”を旗艦に、潮・響が横一列で対潜警戒しつつ微速前進…その後ろを矢矧以下の第二水雷戦隊が続く。
        雪風・霞・初霜らが海面に流れてしまうほど長大な艤装制服の裾を持ち、明石が言っていた通り“花魁道中”さながらの光景である。

        “軍艦防波堤委員会”の面々へ小さく手を振りながら、冬月が呟き、それを矢矧と涼月が頼もしそうに見つめる。

        「今度は日の丸の小旗は振られないのだな…なるほど、やはりあの頃の時代とは違うという事か。
        だが悪くない…今もこうしてあれだけの人々が見送りに、応援してくれている。
        今度は国体や陛下・軍のメンツではない、あの人々の笑顔と暮らしを護るために…私は戦う」

        矢矧:
        「ようやく全員揃ったわね…これで私達に負けはないわ、ただ征くのみ。
        それより大和、アレ…岸壁の一角にいる数人の老人と付き添いのグループ…。
        貴女をジッと見つめているわ…十中八九、乗組員と遺族会の人達じゃない?」

        大和:
        「本当だわ…わざわざムリを押して見に来てくれたのね、もう動き回れるような年齢じゃないでしょうに…。
        それにしても…強く大きなものに対する純粋な憧れ、世界でもっとも美しい最大最強の戦艦…か。
        妖精さん、岸壁の皆さんに発光信号を打ってもらえる?」

        頷いた艤装妖精の1人が陣取っていた主砲塔から背中の設備へよじ登り、岸壁の人々へ向けてチカチカと発光信号を閃かせた。

        “応援アリガトウ。
        皆ノ夢ト希望・憧レ・日常ヲ守ルタメ、我、期待ニ応エントス”
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          > エルムさん

          「ソナーに感、敵潜!! 警戒隊、角度を微調整しつつヘッジホッグ投射よぉーいッ!!」

          「潮より矢矧さん、艦隊停止してください!!
          数は3、今度は偵察小隊じゃなさそうです。明らかに出撃を睨んでの待ち伏せですね…」

          「少数チーム制多段配置のウルフパックか…。
          こっちの艦隊戦力に微ダメージを与えて、少しづつ脱落者を生じさせるつもりだろう。
          かつての私達もフネ時代ドクトリンにしていた作戦だが、敵に使われるといやらしい手だ…まったく」

          「矢矧より大和。
          前方警戒隊より敵潜発見の急報…艦隊、停止します。
          各駆逐艦は受け持ち方向を中心に対潜警戒、魚雷を撃たせるな。
          発見次第、機銃掃射ないし爆雷を叩きこみなさいッ!!」

          突如として可愛らしく、甲高い少女の声が海面に響き渡った。
          潮が通信機に叫び、響が後方へ向けて大きく手を挙げて停止を促す。

          これを受けて、後方約1kmを進んでいた矢矧がウォータージェットを逆噴射させて急減速…同時に艦隊総旗艦の大和へ警報を送る。
          駆逐艦娘たちは減速しつつも停止はせず、ソナーと警戒の視線を周囲へ向けた。
          冬月・涼月だけはソナーで対潜警戒をしつつ、防空艦らしく電探と視線は空を睨んでいる。

          ピーンピーン…と規則的な探信音が小さな海防艦娘の爪先から放たれる。
          主に駆逐艦以下の艦娘が装備する、推進用高効率高回転スクリューと足首までの簡易装甲・対潜用ソナーを一体化した艤装モジュールだ。

          沢山の人々に見送られて意気揚々と呉を出撃した大和たちだったが、瀬戸内海西部を抜けて豊後水道に進入したとたん、侵入していた深海潜水艦群に遭遇した。
          最初は偵察小隊、さらに別の偵察小隊、そして狙撃チーム…以降集まって来た潜水カ級などにより、現在まで小刻みな襲撃が続いている。

          豊後水道の守りを担当する、新設の大神海軍基地も深海潜水艦群の展開は把握しており、数少ない実戦組とその他多くの候補生艦娘を送り出して掃討作戦を行っているが…いかんせん数が多すぎた。
          いまだ未熟ゆえに負傷・作戦離脱する候補生艦娘もいる中、まるで地雷原を進むように慎重に進撃してくる大和たちを出迎えるのだった。
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            > エルムさん

            ??:
            「あれが呉の艦隊…大和さん、やっぱりフネでも艦娘でも目立ちますね(笑)
            こちら大神海軍基地所属・旗艦の駆逐艦娘“花月”です!!
            私たちの力不足で掃討しきれず申し訳ありません…敵潜は水道の中央付近と出口に数多く潜んでいるようです、ご注意くださいッ!!」

            遠目でも目立つ巨大な主砲と和傘、白い大きな羽織りを海風にはためかせた人影。
            その周りに展開する多数の小さな影、その前方を進むいくつかの影に向かって少女…秋月型防空艦娘の“花月”は叫んだ。
            すぐに声が届かない距離だと気付き、慌てて無線機のスイッチを入れて再度叫ぶ。
            すぐに返事が返ってきた…どうやら大和じきじきのようだ。

            『━━こちら呉第二艦隊総旗艦・戦艦大和。
            ご忠告ありがとうございます、大神基地・駆逐艦“花月”さん。
            皆さんの力不足ではないです…責めるつもりはないので安心して下さい。
            鎮守府にこの海域への基地航空隊対潜支援を要請しますので、皆さんはいったん帰還して態勢立て直しを。
            どうか無事の作戦終了を祈ります』

            「……!! 総旗艦自ら…。あ、ありがとうございますっ!!
            沖縄救援までの長い道のり、どうかご武運を…」

            『━━“みんな”が揃いました、今の私達に負けはありません。
            帰還の際のお出迎えをお願いしてもよろしいですか?』

            「は、はいっ!! それはもう喜んでっ…!!」

            大神基地沖合から水道中央を進む影の隊列に見えないと思いつつ、敬礼をしてみせる。
            するとどうやって気付いたのか、遠目でも答礼を返してくる様子が見て取れ、思わず花月は歓喜の笑みをこぼした。

            「それにしても…どうして艦娘母艦がいないんだろう?
            アブナイ海域とか長距離行動する時は、たいてい母艦が同行するって座学で習ったんだケド…」

            周囲で呟きを聞いた何人かの候補生艦娘が相槌を打つ。
            大和たちが「母艦の支援を得ていては“あの時のリベンジ”にならないから」と断ったためである事を、知る由もない。


            スクリュー式は主に改二ではない無印の艦娘、ウォータージェット式は主に改二以上の改装・一部の無印艦娘など。
            大和以下の第二艦隊、潮や響は改二改装を受けているためウォータージェット推進。
            “志賀”や“花月”はスクリュー式。
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              > エルムさん

              豊後水道を抜け、九州南端を回り込んで遠く屋久島を見ながら進む大和たち。
              ここで、どこからか飛来した深海偵察機の接触を受ける。

              こちらを視認出来るかギリギリの長距離だったが…恐らくレーダー装備なのだろう、該当の機体からの電波発信を逆探が捉えた。
              接触前から遠くないどこかの海域と思われる場所で、いくつもの不審な電波のやりとりが傍受されているため、敵が待ち構えている事は容易に想定出来た。

              矢矧:
              「“あの時”と同じか…どうあがいても私達の出撃はバレるのね。
              毎回毎回、たまには隠密行動成功させてくれたってイイじゃない(苦笑)
              ねぇ大和…貴女もそう思わない?」

              大和:「アノ水道はね…こればかりは待ち伏せ側に有利だもんね。ホント、私達もラクをしてみたいわ(笑)」

              肩をすくめて振り返る矢矧に大和も苦笑いで頷く。
              これだけ敵の電波が飛び交っているという事は、間もなく攻撃が来るだろう…今度は潜水艦ではなく、空襲が。

              雪風:
              「それより皆さん、警戒を…次は空襲がきます。
              これまで何度か沖縄行きの作戦がありましたケド、そのたびに敵機も手強くなってきてるので油断は禁物ですよっ?」

              浜風:
              「分かってますよ、雪風…慢心などというものはしていないつもりです。
              しかしどうだろう…帰った後は季節的に夏だし、今のうちに水着選びくらいはしてもいいのでは。
              その…提督と出かけるには海は避けられないし、執務室にはやはり華が必要だしゴニョゴニョ…」

              磯風:
              「それが慢心っていうんじゃないのか、浜風?
              だがまぁ、今から帰還後のコトを考えておくのは前向きでイイと私も思う。
              そうだな…祝宴でもやろうじゃないか、もちろん私も自慢の一品を作せてもらうからみんなで…「(!!)そ、それよりカボチャですカボチャ!! 頭を使えば多種多様なモノが作れるので私が振る舞いましょうっ!!」…おい涼月、割って入るな(呆れ)」

              冬月:
              「何を慌ててるんだ涼、磯風さんが話してる最中に…失礼だろう?
              磯風さんの一品、まだ食べた事がないんだ…私も「お冬さんっ!!(汗)」…なんだなんだ、まったく(困惑)」
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                > エルムさん

                霞:
                「はァー、どいつもこいつも揃って…。
                いい、アンタ達!? ここはもう敵機動部隊の空襲圏内なの。
                さっきの哨戒機が通報した以上、いつ攻撃隊がやってきてもおかしくないのよ!?(怒)」

                初霜:
                「(…でも霞さんも、さっきまでスマホをチラチラ見てましたよね?
                提督がどうとかって、荒潮さんとのチャットらしい文字が見えたんですケド…)」

                騒々しい艦隊内の会話に緊張の色はないと、喜ぶべきか呆れるべきか微妙な表情を浮かべていた大和。
                ふと真顔になり、前方を進む警戒隊の志賀・潮・響を呼び寄せる。

                「志賀さん、潮さん、響さん…ちょっといい? いったん隊列を解いて、こっちへ来てもらえるかしら?」

                『こちら志賀です。え、隊列を解いてですか? で、でも…』

                『こちら矢矧。二水戦にも私や秋月型・霞に雪風といった高性能電探を持つ者がいるわ、下がってもらっても大丈夫よ』

                不承不承といった様子でUターンしてくる3人の艦娘。
                ただ、潮と響は呼び戻された意図を悟っているらしく、何か言いたげな視線を大和や矢矧にぶつけてきている。

                「海防艦“志賀”です。あの、いったいなんのご用でしょうかっ…?」

                潮・響:「「………」」

                大和はまず2人に目配せして謝ると、志賀に自身が羽織っている薄桃色の着物を脱いで渡した。
                目をぱちくりして理解出来ないでいる彼女へ、子供を諭す口調で話す。

                「第二艦隊総旗艦・大和より海防艦“志賀”、および警戒隊。
                ただいまをもって、私の権限により任務を解きます…この着物を持ち、呉へ帰還して下さい」

                「えっ!? そんなっ…志賀たちが前方警戒隊がいないと、大和さんたちに何かあったら!!(汗)」

                「…やっぱり、潮たちは帰されるんですね。潮、機関は異常ないですよ?」

                「…足手まといだったかい? この場合、1人でも戦力いた方が合理的だと思うんだけどね…?」

                これは大和以下、第二艦隊の戦い…やはり“あの時のメンツ”でやらねば意味がない、と言いたかったのだが。
                ここは呑み込み、あえて転戦を命じることにした。
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                  > エルムさん

                  「ふふふ、足手まといだなんて思ってないですよ(笑)
                  この着物は明石さんにお借りした高い礼装だから、傷つけるワケにはいかないだけ…。
                  そうね、じゃあ豊後水道でガンバっている大神基地のコたちの応援に行ってもらえますか?
                  自慢じゃないけれど、ご覧の通り改二改装を受けた大和や矢矧…みんなはそう簡単にやられないし、強い。
                  けれど今、アノ水道にいるコ達のほとんどは候補生で力不足…。
                  どちらが一番助けを必要としているか、分かりますよね…?」

                  上手い具合に言いくるめられた志賀はピシッと敬礼し、潮と響を促す。
                  さすがに歴戦の2人は言いくるめられなかったようで、最後まで不満そうな目つきを隠そうともしなかった。

                  「分かりました、それでは豊後水道の応援に行ってきます!!
                  そうですよね…あの敵潜の群れはやはり海防艦がいないとっ!!」

                  「大和さんの言うコトは分かりますし理屈も通ってます、でも…。
                  …生きて戻ってきて下さいね? みんなのためにも、提督のためにも…」

                  「また400機近い敵機がくるんだよ…キミを弱いと言うつもりはないが、耐えられるのかい?」

                  そんなこんなで志賀たちを豊後水道へ帰し、姿が見えなくなった直後である。
                  大和が頭部に装備している、21号電探改二が深海攻撃隊の大群を捉えた。

                  「あの子たちを返したのは絶妙なタイミングでしたね…。
                  全艦、対空戦闘準備!! 電探情報共有…統制射撃(第二艦隊対空カットイン)を行います。
                  艦隊は戦闘速力準備、出力待機ッ!!」

                  大和はそう号令を発しながら、片腕をバッと前方へ突き出す。
                  すると鈴谷型にも似た小さな航空甲板が出現し、次々と強風改が発艦していく。
                  一通り発艦したのを確認し、突き出した腕を戻すと航空甲板は消滅…代わりに対空噴進砲が集中配置された砲座が出現する。

                  「敵機接近!!
                  雲量7から8、目標の視認性は低い…。また“あの時”と同じ状況か…」

                  「大丈夫です、冬月さん。今度返り討ちに遭うのは…向こうですから(笑)」

                  不敵な笑みと浮かべてみせる大和。
                  そして、従来の彼女ではありえなかった号令を発するのだった。
                  低速戦艦である大和型が出し得ないはずの速度での戦闘行動を…。

                  「敵編隊が接近して射程に入り次第、全対空兵装の無制限使用を許可します。
                  また、それを合図に艦隊速力を上げます…発揮速度、“32ノット”」
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                    > エルムさん

                    ザザザザ

                    見慣れない深海棲艦の群れが海中より姿を現し、周囲を警戒しつつ航行し始めた。
                    空母棲姫に似た容貌で、恐らくは亜種であると推測される。
                    そしてその個体が12隻…舳先を並べ、深海機動部隊を構成していた。

                    ??:「ヤハリ出テキタカ…。
                    コノ沖縄ヲ攻撃スレバ、ノコノコ顔ヲ出シテクル事ハ想定済ミ。
                    ドウシテ毎回毎回、同ジmemberデヤッテクルノカ…懲リナイヤツラダ」

                    ??:「懲リナイナラ、何度デモ分カラセテヤルマデダ」

                    沖縄を艦砲射撃していた深海棲艦…その戦艦部隊である、複数のタ級・重巡棲姫・駆逐ナ級後期型elite。
                    そして未知の戦艦型姫個体6隻が、大和艦隊出撃の報を受けて動き出した。

                    ??:
                    「ソウカ、ヤマトガ出テキタノカ…。
                    戦艦トシテ生マレタカラニハ、世界最大最強ト言ワレルヤツト戦ッテミタカッタ。
                    コンナ、ツマラナイ対地砲撃ナド我々ニトッテ余興ニモナラナイ」

                    ??:「フフ…今度ハ無事ニココマデ辿リ着ケルカシラネ?(笑)」

                    ??:「マタ空母ノ連中ガ先ニ手ヲ出スンデショウ?
                    ドウセ私達ノ出番ハナイデショウヨ…」

                    ??:「ソレナラ、コチラカラ迎エニ行ケバイイ。
                    今度ハ機動部隊ノ連中ノ攻撃ヲ、カイクグッテキテモラワネバ…敵ニ祈ルノモオカシナ話ダケドネ?(笑)」

                    大和に負けず劣らずの巨大な16inch主砲を揺らし、北東の海を不敵な笑みで見つめる。

                    その時、旗艦と思われる戦艦の個体がふと何かを思い出したように立ち止まり、どこかへ向けた意思疎通を行った。

                    ??:
                    「言ットクケド、今度ハアナタ達ニオイシイ思イハサセナイ…Mary達ガヤル。
                    戦艦同士、華ノ艦隊決戦ノ前ノ前菜…hors d'oeuvreニナッテモラウワ。“Let us do it”」

                    まだ距離が遠くほとんどの敵通信が傍受出来なかったものの、最後の一文だけは大和たちにも鮮明に聞き取れた。
                    これにより、沖縄含む南西海域では敵機動部隊の他に未知の深海戦艦部隊も存在していると判明。
                    自分達10隻で相手取らねばならないハードルの高さだったが、大和に怯えは無かった。
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                      > エルムさん

                      大和:「最後のアレは英文…。
                      そう、あの時の亡霊が…いえ、戦いの執念・あるいは執着に囚われた哀れな“魂(モノ)”たちがいるのね。
                      だけど今の大和たちなら十分にやれる…望むトコロですっ!!」

                      矢矧:「未知の深海機動部隊に未知の深海戦艦部隊、か…。
                      軍令部も提督もさすがに情報は掴んでいなかったのかしらね、まぁこうなるだろうコトは薄々感じてたケド(笑)」

                      冬月:
                      「さっきから接近したり遠ざかったり…敵襲ではないな、アレは深海索敵機か。
                      それにしてもさっきの敵通信…Maryとはもしや、メリーランド級か?
                      敵もこの戦の流れも…きっと運命、なんだろうな。
                      だが、今度はみんなを護り抜いてみせるさ…やるぞ、涼」

                      雪風:
                      「みなさん、ちょっとあたしの提案なんですケド!!
                      未知の深海棲艦の暫定名ですケド…沖縄・南西諸島から文字を取って、こう呼んでみませんか?
                      “沖縄攻撃戦艦群”・“奄美群島深海空母棲姫群”」

                      浜風:「あまり捻りのない名称だと思うが…まぁ、いいんじゃないでしょうか?
                      戦艦群・空母群がいるなら当然、巡洋艦以下の水雷戦隊も多数いる…しかし“我に倍する敵恐るるに足らず”、です」

                      磯風:
                      「だな。
                      明石のヤツが肝いりで妖精連中を鍛えてくれた、“水雷戦隊熟練見張り員”もいる…長距離必殺の一撃をお見舞いしてやろうじゃないか」

                      太陽が天頂に昇る正午頃、大和の対空電探が付近に張り付く索敵機とは別の敵機を捉えた…今度は大編隊だ。

                      大和:「来ましたね。
                      各艦は煙幕を展開、可能な限り敵機の視界を妨害して下さい!!
                      電波欺瞞紙はこちらの電探も使用不能になるため厳禁、発砲もギリギリまで引き付けて…では、健闘を祈ります。
                      せんとぉーーうう!!」

                      大和の51cm三連装主砲が旋回し、探知した敵編隊の方角を指向。
                      続いて集中配置された長10cm高角砲や噴進砲、矢矧以下の護衛艦艇も砲や機銃・噴進砲を指向する。

                      意図的に吐き出された艦娘達のもうもうたる黒煙が艦隊を覆い、著しく視認性を悪化させる。
                      これで敵機は攻撃する際、低空に下りざるを得なくなったわけだ。

                      やがて来襲した第一波攻撃隊の先頭が対空砲火の無さを不審に思いながら高度を下げた瞬間。
                      めくるめく閃光が瞬き、桃色の地獄が出現した。
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