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艦これSS倶楽部

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  • 【SS構想仮置き場・23】

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    湯畑に 温もり分ける 袖白息

    毎年冬場に提督の故郷北部にある草津温泉へ2人やってきては、硫黄の香りとひとときの熱い湯船の風情を楽しむ鳳翔。
    トレードマークの蜻蛉色の着物の上に彼が見繕った藍染めの羽織を纏い、しゃりしゃりと厚足袋の音を微かに響かせながら石畳を歩く。
    ふと道端に見つけた観光客用の記帳台に何を書くか思案していた彼女は、提督が両掌に白い吐息をかけて温めたあと、それを自分の両手を掴んでさすってきた様子に微笑みながら一筆したためるのだった。
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      鹿島の一日警察署長、武蔵し、暴走族乗り込みバトル
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        「秋の全国交通安全運動?」

        「あぁ。
        これは全国の警察署で一斉にやるんだが…ウチの鎮守府の連中にもマスコットキャラとして、一日署長をやってくれないかと打診が来ててな。
        ちなみに打診してきたのは、呉中央警察署・東警察署・西警察署だ」

        11月、窓の外の風景に黄色いものが目立ち始めてきた季節。
        呉鎮守府から眺める北側の山間部は紅葉が色づき始め、敷地内の街路樹もイチョウや花壇のコスモスといった花や葉が、秋風に揺れている。

        「アレじゃん? やっぱビジュアルでオトコの気を引いて、どーにかしよーっていう魂胆っしょ?(笑)」

        「身もフタも無い事を言うなよ(笑)
        まあ艦娘は美女&美少女揃いだからな、見映えを要求される面では実に都合がいいんだろう」

        鎮守府の執務室、窓際に配置された執務デスクに座る濃紺の第一種軍装を着た男性…提督が数枚の書類を手に気だるそうな表情で言う。
        部屋の中央には応接用の本革ソファと樫の木製の頑丈そうなテーブルがあり、2人の場違いな制服の女子高生が腰掛けていた。

        女子高生はテーブルに置いたポッキー箱から一本取り出して頬張り、タピオカジュースを美味しそうに飲みながらスマホをいじっている。
        すでに寒くなってきているにも関わらず、スカートは短くワイシャツは胸元のボタンも外し、ブレザーはソファの背もたれへ乱雑に乗せている。
        セミロングの地毛は青いのだが茶髪のウィッグを被り、爪はピンクのマニキュア…いかにも“ギャル”といういで立ちだ。

        もう一人の子もブレザーは脱いでいるが、さすがにワイシャツやスカートはしっかり着ている。
        こちらは地毛が茶髪らしく、栗色の髪をまとめたポニーテールが身じろぎするたびにゆらゆらと揺れていた。
        彼女の方は教科書とノートを広げており、どうやら勉強中らしい。

        2人の女子高生…ギャルな方は鈴谷、ポニーテールの方は熊野という。
        どちらもかつて帝國海軍の重巡がヒトへ転生した艦娘で、呉鎮守府の歴戦幹部メンバーだ。
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          > エルムさん

          「警察署が三ヵ所あるということは…一日署長になった場合、それぞれ巡業よろしく回らなければならないってワケですわよね?」

          それまで静かに宿題をしていた(どうやら鈴谷の分らしい)熊野がおもむろに教科書とラクガキやシールまみれなノートを閉じ、セブンのカフェラテを一口飲んだあと会話へ混ざってきた。

          「いや…それが警察の方から注文があってな、三ヵ所それぞれに別の艦娘を派遣して欲しいそうなんだ。
          ウチ(海軍)としてもイメージアップと民間交流になるし、断る道理はないんだよな。
          で、誰を充てようか考えてるんだ…とりあえず鎮守府内SNSで話持ちかけて希望者募ろうかなぁ~」

          執務デスクにあるPCへ向き直り、マウスを握ったところで思い出したように鈴谷へ声をかける。

          「おうそうだ、鈴谷」

          「なーーにーー」

          「ウチの鎮守府から一番近い、東警察署は特にお前をご指名してきてるぞ。
          補導…は艦娘という事でお目こぼししてもらってるが、幾度となくアソコにゃお世話になってるだろ?(笑)」

          「ブフォォッ!?」

          「汚っ!? ちょっと鈴谷、なんて下品なっ…!!」

          バコッ!

          「ぎゃーっ!!」

          提督の一言を聞いた鈴谷が盛大に吹き出し、あろうことか熊野の顔面へ次々と弾丸のようにタピオカが命中する。
          すかさず熊野は教科書の束を彼女の脳天に叩き付けて撃沈、半泣きでハンカチを取り出し拭き取ろうとするが、諦めてトイレの洗面所へ駆けて行った。
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            > エルムさん

            「ゲホッゲホッ、ゴホッ…。
            いたたた頭イタイ喉が苦しい、もうメッチャキッツ(泣)
            いやァ~…アタシが警察のお世話になってるのって、大体Tさんのせいジャン?(笑)
            一応アタシJKでTさんオトナだし、まーその…パ◯活やってる目で周りから見られちゃうお決まりパターン確定的な…///」

            「そうだっけな?
            まあその東署が、今回の一日署長マスコットを引き受けてくれたら見逃し累積はチャラにしてやるってよ。
            ウマい話じゃねぇか、俺も乗かっていくわ(笑)
            今度、呉駅前にオープンするスイーツショップの開店特別記念商品予約チケットだ…3枚ある。
            熊野と2人、そして俺と2人…どうだ?ん? ヤ・ら・な・い・か・?」

            話しながらスタスタ近寄ってソファへ押し倒し、まるで万札のように持ったチケットを鈴谷の頬に当てて囁く。
            ギャルぶっているが中身はウブな彼女はもちろん提督の急襲に耐えられるはずもなく、真っ赤になりながら俯き頷いた。
            傍目から見れば、文字通りパ◯活を持ちかけようとしているソレだ。

            「~~ッ!?
            ウ、ウン。Tさんならい、イイ…よ…?///」

            「…よし、成立だな。コレは前払いだ、とっておけ」

            ハァァ…と吐息を耳元へ吹きかけつつ甘噛みする提督に鈴谷はもはや理性を粉砕され、ゾクゾク背筋に走る快感に身体を震わせながら息荒く熱っぽい眼差しを向けるのみだ。

            「やれやれ…2人とも、昼間っからサカるのは止めていただけませんこと?」

            執務室入口に寄りかかりながらジト目で睨んでくる熊野。
            それを見た提督は熊野の方へ近付き、同様の提案をした。

            「熊野、鈴谷と一緒に東警察署のマスコットをやってくれないか?
            もちろんタダでとは言わない、ここにチケットがある…かくかくしかじか。
            前払いと言ってはなんだが…こんなのはお好みかな?(笑)」

            「あ、ちょっと提督…きゃっ!?
            ままま待って、足の間に膝を入れちゃ…ンッ…耳元フーはだめ、です、わぁぁぁ~…///」

            ガクンと提督の膝の上にまたがる格好で崩れ落ちる熊野を見ていた鈴谷が、ボソリと呟く。

            「お~、今日のくまのんパンツはお上品に白レース付きのピンクですかぁ…。
            てかこんな急襲からの追撃されたらイッパツ撃沈しちゃうジャン、ズルいズルい///」
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              > エルムさん

              「お取込み中失礼しますね、鹿島です。
              練習艦隊運用実績の週間報告書と講習関連の報告書をお持ちしたのですケド…って、まぁこんなトコで!?///
              しかもあの熊野さんが執務室入口で、まさかこんな大胆な…でもお相手が提督さんなら問題ないのかしら。
              うふふっ、オジャマ虫は退散しておきますねぇ~…あ、鈴谷さんごきげんよう♪」

              コツコツとパンプスの音を木目の通路に響かせてやってきたのは、練習巡洋艦娘の鹿島だ。
              おもに新人含む練度の低いヒヨッコ艦娘の指導と、鎮守府内における学生艦娘の一般授業や軍務講習などを受け持っている。

              提督が熊野を跨らせている場所がちょうど執務室入口の内側だったために見えず、通路の鹿島からは何やら騒々しい話声しか聞こえなかった。
              いきさつを知らぬままイキナリ衝撃シーンを見てしまった彼女は、意外に思いつつも一瞬で理解(誤解)した。

              支えが無いため無意識に提督の首に腕を回し密着している上、挙句に鈴谷からは角度的に見えぬだろう満更でもない表情で彼の膝の上に跨るダイタンな熊野を見た鹿島は、そそくさとデスクに書類を置いて立ち去ろうとする。
              その去り際の襟を掴んだのは、提督ではなく熊野だった。

              ガシッ

              「きゃっ!? 提督さ…熊野さん!?」

              「見ましたわね…?
              何を察したのか存じませんケド、このまま帰すワケにはいきません。
              提督からの指令です…練習巡洋艦“鹿島”を秋の交通安全運動における民間交流の一環として、呉西警察署の一日署長に任ずる」

              「えっ、一日署長…ですか?
              でも提督さんじきじきの指令と言うコトなら…んー、じゃあ香取姉と業務の調整してみますね」

              「いや俺そんな指示出してな「目撃者は生かして帰すワケにいきませんの」さ、さいですか…」

              あろうことか、熊野が虚無の提督指令を発して鹿島を呉西警察署の一日署長役を決めてしまう。
              ただ、ビジュアルに秀でている彼女ならば適任であろう。

              「ほぉ~ん、くまのんは膝乗りプレイがお好みですかァ…お股モジモジさせちゃって。
              アタシが知る限り、まだTさんと経験ないハズなんだケド…勉強熱心なのは良いコトで。にっひひひ(笑)」

              一方の鈴谷はといえば、ソファに寝そべりながら提督の膝乗りプレイを満喫する熊野をスマホで盗撮しまくっていたのだった。
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                > エルムさん

                ブオンブォンッ!

                「…うん?」

                ブォンッ、ブオォァァァアアアアーーッ!
                バババババッ、バンバンバンバンッ!

                「うぇ、ゾッキーじゃん…。まぢウルサイし…まだあんなのいるんだ?」

                「だいぶ古い言い回しですわね。今は…ンッ、珍走団って言うらしいですわ」

                「そうなん? くまのん、今…いやなんでもない(笑)」

                「…うふ(笑)」

                熊野の指摘で知ったかがバレたのも気にせず、何事かを問おうとする鈴谷。
                一瞬ビクンと震えながら提督の膝から下り、制服のシワを伸ばして何かを取り繕おうとしている熊野。
                2人の一連の仕草や言動を興味津々で観察している鹿島。

                「族か…鎮守府を囲うフェンスの向こう、外縁道路を走ってるみたいだな。
                音からして数台くらいいるのか…はた迷惑だ、営門の守衛に通報してもらうか」

                女性陣のアヤシイ空気に気付くことなく、鎮守府外から響く爆音のコールに注意を向けている提督。
                ただ、熊野が跨っていた膝に残る温もりと湿気が良い置き土産だなぁ~とは思っていた。

                ほどなくしてパトカーのサイレンが響き始め、族はけたたましい爆音とともに退散していったようだ。
                だがまた来るかもしれない、一応民間の事なので彼としては通報以外に手の打ちようも…。

                「・・・いや、あるな。
                残り1人、中央警察署の一日署長になってもらう候補は決まった」

                数日後。
                それぞれの警察署前にて任命式が行われ、整列する警官の一群や地元メディアがフラッシュを浴びせていた。

                「本日よりここ、呉東警察署の一日署長に任命されました、海軍呉鎮守府の艦娘・熊野ですわ。
                こちらの鈴谷ともどもお手柔らかにお願い致しますの」

                「チィーッスぅ、鈴谷でーっす!
                あ…知ってる? デスヨネー…(笑)
                まァ、そんなワケで点数稼ぎにきましたんでぇ…マジメにヨ・ロ・シ・ク・ぅ~♪」

                “一日署長”の白いタスキをかけた熊野と鈴谷。
                一方は礼儀正しくお辞儀しながらマイクで挨拶し、一方は腰元を折ってミニスカにした婦人警官の制服から伸びる健康的な白い両足を大きく伸ばしギャルピースをしてみせる。

                どこがマジメだよw
                違反点数ならぬイメージ点数稼ぎに来たのかい(笑)
                可愛すぎるJK署長、爆・誕です!!

                顔見知り(意味深)の警官達のヤジや地元TV局のリポーターがカメラを前に、大げさな解説をする。
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                  > エルムさん

                  「みなさん、呉鎮守府から参りました艦娘・鹿島です。
                  軍務の関係上、引率や教育ごとは慣れているのですケド…取り締まりは専門外なんです。
                  なので、素人で何も知らない私に手取り足取り優しく教えてくださいね?
                  それでは呉西警察署の警官の方々、市民の方々、こうして見に来て下さった報道関係者さん、それと犯罪者の方々。
                  よろしくお願いします…うふふっ(笑)
                  悪いヒトは鹿島がタイホしちゃいますからね。めっですよ、めっ♪」

                  腰に手を当て、前屈みでウインクと指先を振って挨拶する鹿島。
                  自分のビジュアルを自覚しているので、こちらも婦人警官の私服スカートの裾を折ってミニスカにしている。

                  上半身と下半身、そして足の長さといった比率がいわゆる黄金比率なため実にサマになっており、思わず目を逸らしてしまうほどフトモモが艶めかしく眩しい。
                  なぜか参列しているメンツに女性がおらず男性陣ばかりなのは、彼女の魅力か…はたまた業のなせるワザか。
                  西警察署の警官・マスコミ・市民に混じって、大砲のように巨大なカメラを構えたオタクが遠距離・近距離問わずそこかしこから狙っているのは、恐らくこの警察署だけだろう。

                  そして━━

                  ザッ

                  「…ココか、父上が言っていた呉中央警察署というのは。
                  御免! 今日から一日世話になる海軍呉鎮守府所属の艦娘・武蔵だ、一日署長任務と聞いてやってきた。
                  どなたか、取り次ぎの方はおられぬだろうか?」

                  コンコン

                  脱いだジャケットを片手で肩にかけ、ジーンズの埃を軽く払いながらノックする。

                  一日署長と聞いてやってきたはいいものの、提督からもらった部署…ココは少し“実戦”寄り過ぎるのではないか?
                  内心、武蔵はそんなことを思っていた。
                  窓口もなく、無機質な通路とドアのみ…そして出てきた人物も“実戦”向きなカオをした男。

                  「…話は聞いている。
                  ようこそ“マルソウ”対策課へ…“一日署長”殿。
                  君があの有名な戦艦武蔵か、ヘタな人員より心強い応援だな(笑)」
                  続きを見る ▾

                    > エルムさん

                    「一日署長たるお2人に、早速やっていただきたいお仕事があります。
                    変質者成敗するもの…“女は弱者じゃない”を体現するのに相応しく、お2人の正義感を発揮するのにもちょうど良いと思われます」

                    普段、東警察署の署長を務める小太りの壮年男性が、数枚のグラフ付き書類を手に説明する。

                    なんでもこのところ、市内の公園で夕暮れの時間にロングコートを着た不審者が現れるらしい。
                    幸い、被害に遭った者はいないのだが…複数の目撃証言から露出狂の可能性があると言うことで、さっそく聞き込みから開始した。

                    「チィーッスぅ。学校サボりのキミたちィ、ちょっち聞きたいんだケドさァ~…いいカナ?」

                    「ごきげんよう皆さん、談笑中に失礼致しますわ。
                    お尋ねしたいのですケド…近頃、この辺りでコートを纏った不審者が出るという情報を知りませんこと?」

                    くだんの公園へ向かうと午前中にも関わらず制服姿の女子高生がおり、鈴谷と熊野は公園へ向かい噴水の石段で談笑する彼女たちに声をかけた。
                    2人のお目付け役の警官は、離れた場所に駐車するパトカーで待機している。
                    声をかけられた女子高生たちは鈴谷の友人らしく、胡散臭げに見上げて誰なのか気付き、ケラケラ笑いながらからかう。

                    「は?誰?ナンパ?
                    うちらそーいうの間に合って…って、すずやん!?」

                    「えーなになに、艦娘クビになってオマワリサン始めたん?マジ?w
                    しかもソレ、ガチの警察手帳じゃん…似合わなーw
                    てかミニスカとか、オマワリがそーいうカッコしちゃヤバくない!? コスじゃないよね?」

                    「や、クビになったワケじゃ…ホラこのタスキ、一日署長任務ってヤツでしてぇ~(笑)
                    んでサ、このへんにヘンタイ出没してない? そーいう情報あったらヨロシク」

                    カツカツとヒールの音を響かせながらどっこいしょと石段に腰を下ろし、学生達の目線に合わせながら話す鈴谷。
                    なにごともユルくこなす彼女だが、こういうさりげない気配りはやはり育ちの良さが滲み出ているのか…。
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                      > エルムさん

                      「もうちょっと薄暗くなってきてからかなぁ~…。
                      5時とか6時くらいに時々、公園の隅の植木沿いの道をコートとマスク着けた人が歩いてることあるよ。
                      メガネもしてて、ぶっちゃけ人相よく分かんないんだけどね(笑)」

                      「5時~6時…なるほど。では、その時間まで粘ってみる価値がありますわね」

                      サラサラとメモを取っていた熊野がチラリと公園の敷地に立つ時計を見やり、時刻を確認する。
                      やがて噴水の石段でたむろしていた少女達は移動し、ランニング中の一般人も去って人気が無くなった。

                      それを待っていたかのように公衆トイレからサングラスとマスクを着けたロングコートの不審者が現れ、キョロキョロと周囲を警戒しながら植木沿いの道を歩き始めた。

                      「……!! アレか、くまのん早くタイホ「シッ!! まずは行動観察ですわ、例の人物なのかどうか…慎重に見極めなければ」

                      2人は噴水そばのゴミ箱の陰に隠れ、ロングコートの不審者を観察した。
                      くだんの人物はどうやらイヤホンをしているようで、指先で押さえながら頷き通話をしている。

                      「通話してる…スマホかな。あっ、木陰に隠れた…やっぱアヤシすぎるよ、くまのん」

                      「木陰から出た所を狙って職質しますわ…タイミング合わせますわよ、鈴谷」

                      「おっけ。出てきた…1,2、3!!」

                      再度、木陰から出てきた所を鈴谷と熊野は駆け寄って制止…職質を開始した。
                      鈴谷達の動きを見て、さすがに待機していた本物の警官も小走りでやってくる。

                      「突然失礼しまーす。アタシ達、一日警察署長の者でーす。
                      このところ、周辺でロングコートの不審者情報がありまして。
                      念のため声掛けさせてもらったんですケド、不都合なければ素性の確認を…って、あッ逃げた!?」

                      「待てそこのロングコート、逃げるな!!」

                      明らかに動揺した不審者は警官の怒声にも怯まず、踵を返すと一目散に逃亡していく。
                      ただ、その速さが尋常ではない…まるで陸上アスリート並だ、それなりに鍛えている男性警官をも引き離していく。

                      「なんだアイツ、足が速っ…」

                      「フツーの人間じゃないのかな? 行くよくまのん、艦娘のアタシらなら追い付ける!!」

                      「ええ、ここはわたくし達の出番ですわね。それにしてもあの速さと軽い身のこなし、まるで駆逐艦の子みたいですわ…」
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